ワインを出汁で割る。そう聞いて、すぐに味を想像できる人はどれくらいいるだろう。日本酒の出汁割りなら分かる。しかし、ワインとなると話は別だ。気になって、いてもたってもいられず、「SUBA VS(スバ ブイエス)」(渋谷)へサクッと飲みにいってきた。

 店はビルのはざまにあり、看板もない。場所を知らなければ、そのまま通り過ぎてしまいそうだ。実際、私も通り過ぎてしまった。コンクリート打ちっぱなしの内装はしゃれていて「ネオ立ち食い蕎麦屋」といった雰囲気。私が普段飲んでいる近所の蕎麦屋とはだいぶ勝手が違う。

 ビールと、とり天で助走をつけた後、お目当てのワインの出汁割りを注文。半世紀以上生きているが、熱々の出汁で割った赤ワインは初めて見た。グラスの縁には、塩ではなく七味が少々。なるほど。温かい蕎麦に七味をかけて食べるもんなぁ。柔軟な発想をすれば、こういう飲み方ができるわけだ。

 そのお味はというと、これが想像をはるかに超えるおいしさだった。優しい風味の出汁が、ワインに旨味と甘味を補い、五味のバランスを見事に整えているではないか。ワインと出汁のどちらかが強く主張するのではなく、2つが融合することで絶妙な味を成していた。そこに、グラスの縁の七味が加わると、辛味がいいアクセントになり、もうひと口と飲みたくなる。いや、これはもうおかわり決定でしょ。

 正直、飲む前は「ワインと出汁なんて合うのかな?」と疑っていた。ところが、実際に口にすると、ちゃんとした一杯の飲み物と完成されていた。七味まで含め、そのセンスに脱帽である。さらに良いのは、出汁で割ることによって、アルコール度数が下がること。ほろ酔い気分が長く続くのは、実に心地いい。

 筆者にとって蕎麦屋飲みは恒例だが、まだまだ知らない楽しみ方がある。ワインと出汁と七味。この意外な組み合わせを、舌の記憶にしっかりと刻んで帰ってきた。