〝カネをかけなければ勝てない〟という理屈が、今秋の頂上決戦で揺らいでいる。23日(日本時間24日)開幕のワールドシリーズ(WS)は、レイズとブルワーズによる異色の低予算対決。12月1日(同2日)に現行労使協定が期限を迎えるMLBで、この顔合わせがサラリーキャップ(年俸総額上限制)導入を巡る攻防に大きな波紋を広げそうだ。
両球団の年俸総額は、今季のポストシーズン開幕時点でブルワーズが全30球団中19位、レイズは25位。それでもブルワーズは103勝でメジャー最多勝を記録し、リーグ優勝決定シリーズでは巨額投資を続けるドジャースを4連勝で撃破。レイズもア・リーグ地区シリーズでヤンキースを退けた。札束で戦力をかき集めるだけが勝利への道ではないと、結果で証明した格好だ。
米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」は23日、両球団のWS進出を背景に、戦力均衡を巡るデータを検証。2022~26年の分析では、単年度の年俸総額で説明できるレギュラーシーズン勝率のばらつきは約17%。5年間の累積支出では約31%に上昇する一方、球団の市場規模を測る別の指標ではわずか約1%だった。
つまり、長年の資金投入は無視できないが、大都市の金満球団だけが強いとは限らない。現行制度は高額支出球団に「ぜいたく税」を課す仕組みで、総年俸の一律上限はない。球団オーナー側は給与格差が戦力格差につながるとして、これに代わり総年俸に上限と下限を設ける制度を主張。対する選手会は、選手への支出に天井を設けても競争の公平さは保証されず、報酬抑制につながると反発。低予算球団の支出を促す収益分配の見直しなどを対案に掲げる。
皮肉なのは、低予算で勝ち上がったブルワーズのマーク・アタナシオ・オーナー自身が、サラリーキャップ導入を支持していることだ。1年の快進撃だけでは、資金力の差による長期的な不利を覆せないという思惑も見える。
労使が決裂すれば、ロックアウトも現実味を帯びる。低予算球団同士が世界一を争う26年のWSは、野球に〝公平な競争〟とは何かを問いかける、もう一つの戦場となりそうだ。












