球団初の偉業を成し遂げた虎将に〝全権監督〟を託すのも一手か――。阪神・藤川球児監督(46)は就任2年目で球団初となるリーグ連覇を達成。確かな結果を残す一方、その手腕はグラウンド上の采配だけにとどまらない。独自の組織論を持ち、現役引退後には編成部門にも携わった異色の経歴を考えれば将来、GM的な役割まで十分に担える存在と言えそうだ。球団内外でも、その能力を現場にとどめず、チームづくり全体に生かすべきだとの期待が膨らんでいる。
6日の広島戦(甲子園)に2―1で勝利した後に行われた優勝セレモニーで、若き虎将は大声援を浴びながら7回宙に舞った。「何事にも代えがたい。今年は2年連続でファンの方もすごく喜んでくれていますし、慣れることはないんでしょうね。1年間の激しい戦いの軌跡は選手もファンも含めて、感慨深いと思いますね」と喜びをかみしめた。
今季の戦いでも特徴的だったのは、積極的な一、二軍の入れ替えだ。実績や年齢にとらわれることなく、その時々の状態やチーム事情を見極めながら選手を動かし、チーム内に競争を生み出してきた。
そこには指揮官なりの明確な考えがあった。過去には「責任ある選手がこの環境から飛び出したくなると、責任を持てない人間ばかりが残ることになる。そうなると暗黒時代に戻る気がします」と組織が停滞することへの危機感を口にしたことがある。
チームに変化を生み出す方法についても「ファームに行ってもらうとか、環境に対しての変化をつけることですね」と説明。単なる好不調による昇降格だけではなく、選手を置く環境そのものを変えることで、組織を活性化させる考えを持っている。
そもそも藤川監督は〝現場一筋〟の指揮官ではない。2020年限りで現役を引退すると、翌21年から阪神のスペシャルアシスタント(SA)に就任。選手やスタッフのサポート、野球振興などに携わり、23年からは「球団本部付SA」として新外国人選手の調査など編成部門で国際スカウト的な仕事も担った。
現役時代には米大リーグのカブス、レンジャーズでもプレー。NPBとは異なる環境に身を置き、帰国後に現役を引退してからも、さまざまな立場からプロ野球を見てきた。
阪神にはかつて強い権限を持った指揮官がチームを大きく変えた前例もある。02年に就任した故星野仙一さんだ。同年オフには低迷していたチームの立て直しへ〝大量リストラ〟を決行し、積極的な補強も敢行。就任2年目の03年には18年ぶりのリーグ優勝へと導いた。
球界でも巨人・原辰徳元監督や中日・立浪和義元監督ら、指揮官が編成面にも深く関わった例は少なくない。必要な戦力をそろえて育成し、時には血の入れ替えも断行する。チームを中長期的な視点からつくり上げる仕事には、監督とはまた違った能力が求められる。
2年間で2度のリーグ制覇を成し遂げた藤川監督は、SAとしての編成経験や米国球界を知る強みだけでなく「どんな組織をつくるか」について明確な哲学を持つ。実際にチーム内からも「藤川監督はセットアッパーの木下や守護神の工藤に役割を与えて、しっかりと成長させた。選手を見る目が非凡であることは間違いない」と〝全権監督論〟を後押しする声も出ている。
連覇の次に待つのは3連覇、さらには常勝軍団をどう築くかという難題だ。現場とフロントの双方を知る火の玉指揮官だけに、その能力を監督という枠だけに収めておく手はない。かつての星野氏のような〝全権監督〟への道がいよいよ視界に入ってきた。













