米国とイランの戦争によってホルムズ海峡が事実上閉鎖され、世界のエネルギー市場が深刻な影響を受ける中、イランと連携するイエメンの武装組織フーシ派がサウジアラビアへの攻撃を激化させている。フーシ派はバブ・エル・マンデブ海峡への影響力も強め、米・イラン戦争が中東各地を巻き込む形で拡大している。

 親イラン勢力の一角を占めるフーシ派は14日、サウジアラビア南西部のキング・ハリド空軍基地を標的とする「大規模な軍事作戦」を実施したと発表した。

 フーシ派のヤヒヤ・サリー軍報道官は、通信アプリ「テレグラム」に投稿した声明で、「数十発の弾道ミサイルと数十機のドローン」を使用し、ハミース・ムシャイトにある同基地を攻撃したと説明。標的には戦闘機の格納庫やレーダー施設、滑走路、弾薬庫が含まれていたという。サウジアラビア国防省は、フーシ派の主張についてコメントしていない。

 また、フーシ派はバブ・エル・マンデブ海峡にある戦略上重要なペリム島を制圧し、この狭い海峡への影響力を強めている。

 同海峡は紅海とアデン湾を結び、スエズ運河を経て欧州とアジアをつなぐ海上交通の要衝。ここが封鎖されれば、石油や液化天然ガス(LNG)を運ぶ船舶はアフリカ南端の喜望峰を迂回しなければならず、輸送日数が延びるほか、燃料費や保険料も増大する。このため、同海峡の混乱は原油価格だけでなく、世界の物流費や物価全体を押し上げる恐れがある。

 さらに、サウジアラビアの東西石油パイプラインが先日、イラクから飛来したドローンによる攻撃を受け、運転を停止した。このパイプラインは、世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアがホルムズ海峡を迂回するため、日量約400万バレルの原油を紅海沿岸のヤンブー港へ輸送する役割を果たしてきた。

 サウジ政府は攻撃を受け、安全確認のためパイプラインを予防措置として停止した。停止が長期化すれば、世界の石油供給量の約4%に相当する輸送が滞る恐れがあり、原油価格を押し上げる要因となっている。

 中東事情通は「パイプラインへの攻撃主体は明らかになっていませんが、イラク国内にはドローン運用能力を持つ親イランのシーア派民兵が多数存在し、こうした勢力が関与した可能性が指摘されています。すでにレバノンではヒズボラとイスラエルの戦闘が続いています。今後、ヒズボラに加え、イラクやシリアの親イラン武装勢力が一斉に攻勢を強めれば、複数の戦線が連動し、親イラン勢力による多正面攻撃に発展する恐れもあります」と話している。

 中東情勢は混迷を深めるばかりだ。