【PANTA&HAL/マラッカ(1979年)】

 伝説のバンド「頭脳警察」解散後、日本ロック史上に残る過激な詩人・PANTAが1979年に発表したPANTA&HALの1作目。プロデュースはムーンライダーズ・鈴木慶一。時代を貫いて独自の音楽を追求してきたアイコンが遭遇して誕生した大傑作である。

 テーマは中東から日本へつながるオイルロード。しかしここで歌われているのは、まぎれもなく当時の「生ぬるい夏の風が吹く日本」の現状だった。パンク/ニューウェーブの時代、PANTAは海外のバンドと同様、雑食的に様々な音楽スタイルを取り入れて名曲の数々を吹き込んだ。基本的にはフュージョン色の強いロック。だがレゲエ、カリプソなどの要素も取り入れたサウンドには一部のスキもない。パラシュート参加前の今剛がギターを弾きまくっている。

 特筆すべきは歌詞の素晴らしさだ。A①「マラッカ」ではタンカーが海峡を渡る光景がリアルに歌われ、A②「つれなのふりや」では安土桃山時代の小唄がレゲエのリズムで展開される。A④の感動的なバラード「裸にされた街」では静かに「愛しすぎてた街に/色とりどりの朝がまた来る」と中東紛争への鎮魂歌をささげている。

 B①南国調の「ココヘッド」からアルバム屈指の名曲B②「ネフードの風」への流れは胸に突き刺さる。「ネフードの風/ネフードの風/俺の体はすでに君のものだ」という歌詞はロック史に残る名フレーズである。マーク・ボランにささげたB④「極楽鳥」でアルバムを幕を閉じる。PANTA&HALは翌年、ニューウェーブ色の強い「1980X」を発表し、82年からPANTAは一時的にポップ路線に入った。

 突然の訃報から3年もたったが、このアルバムの完成度はいまだに色あせない。改めて合掌。(敬称略)