【ノース・マリン・ドライブ/ベン・ワット(1983年)】
1980年代に英国ロックシーンで起きたネオ・アコースティック・ムーブメントの先駆者であるベン・ワットのデビュー盤。英インディーチャート1位を記録した。
この音色をどんな言葉にしてもむなしく聞こえる。静寂観に満ちた独特のギターの音、穏やかに歌うベンのボーカル…ほとんど弾き語りの不思議な音空間は衝撃的だった。当時のミュージシャンにも衝撃を与え、アルバムに先駆けて82年には、元ソフト・マシーンのロバート・ワイアットとの共作EP「サマー・イントゥ・ウインター」をリリースしている。独特の音空間はすでにこの時点で完成していた。
ザ・ジャムを解散してスタイル・カウンシルを結成したばかりのポール・ウェラーにも絶賛され、スタイル・カウンシルのデビューアルバム「カフェ・ブリュ」(84年)にも、後にエヴリシング・バット・ザ・ガールで世界的なグループとなるパートナーのトレイシー・ソーンと参加している。
アコギの音色が美しいA①「オン・ボックス・ヒル」からボサノヴァ調の名曲「何でもないよ」への流れは感動的。A面は切なさに胸をかきむしられるような表題曲で終わり、B面はメランコリックな「ウェイティング・ライク・マッド」で始まり、ボブ・ディランのカバー「おれはさびしくなるよ」で幕を閉じる。わずか33分。しかし聴き終えた後、静寂はズシリとした充実感に転じて胸に残る。ジャケットも秀逸で、当時20歳のベンが古着のコートを着てどこかの海辺に立つ裏ジャケの写真はノスタルジーを誘う。ぜひアナログ盤で聴いてほしい。この季節になると聴きたくなる歴史的な名盤である。












