MVP争いの先頭を走る男が、今度は「伝説の領域」まで飲み込もうとしている。カブスのピート・クロウ=アームストロング外野手(24)が5日(日本時間6日)、敵地マイアミでのマーリンズ戦でまたも存在感を刻んだ。先発出場し、4打数1安打1打点。4回には打球速度111・5マイル(約179キロ)の痛烈な適時打を中前へ運び、リードを広げた。チームも6―5で競り勝って3連勝。81勝62敗とし、中地区首位ブルワーズとは7ゲーム差ながら、ナ・リーグのワイルドカードでは首位を守った。

 そんなPCAが、今度は歴史的領域に手をかけた。米メディア「ヤードバーカー」は5日、PCAのfWAR(米データサイト「ファングラフス」版WAR)が9・5に達したと紹介。ナ・リーグで最後に「10」以上を記録したのは、ジャイアンツに在籍していた2004年現役当時のバリー・ボンズ氏(62)で、突破すれば22年ぶりとなる。2001年には当時カブスで現役だったサミー・ソーサ氏(57)が9・9まで迫りながら届かなかった「10」の壁。残り19試合で、PCAはあと0.5まで迫った。

 5日終了時点で打率2割7分9厘、39本塁打、94打点、33盗塁、OPS0・943。40本塁打&40盗塁も十分に狙える位置にいるうえ、最大の武器はメジャー屈指の守備力だ。前出のヤードバーカーも、2001年から04年にかけて球界を席巻したボンズを引き合いに出し、PCAがそれに匹敵するシーズンを送る可能性に言及した。

 そして、もはやPCAはナ・リーグのMVP争いでも、ライバルと目されていた大谷翔平投手(32)を完全に引き離し独走態勢に入っている。MLB公式サイトは2日(同3日)、今季序盤までMVPの大本命だった大谷をPCAが「明確に追い抜いた」と指摘。8月25日(同26日)に公表された同サイトの専門家37人による模擬投票でも、PCAは177点、1位票29票でトップ。大谷は154点、1位票8票だった。

 その後も両者の明暗は広がっている。大谷は左膝、右上腕二頭筋、首の問題を抱え、5日のナショナルズ戦も欠場。ドジャース移籍後最長となる3試合連続欠場となり、球団は負傷者リスト(IL)入りも検討せざるを得ない状況に入った。一方のPCAはグラウンドに立ち続け、勝利に絡み、fWARでは大谷の68を2・7も上回る9・5。MVP争いで〝引導〟を渡すかのように、その差を広げている。

 チームを10月へ引っ張り、自らは40―40と「10WAR」という二つの大台を視界に入れる。PCA旋風は、もう「大谷への挑戦」という段階を通り過ぎた。いま、その視線の先にあるのは22年間閉ざされてきたボンズ氏以来の歴史そのものだ。