北中米W杯が大きな盛り上がりを見せる中、メキシコで殺人件数が急減しているという。背景には、カルテル同士の〝休戦協定〟があるとみられている。メキシコメディア「アリステギ・ノティシアス」が先日、報じた。

 米国、メキシコ、カナダで行われる今回のW杯で、メキシコ国内で開催される試合数は全13試合。メキシコ代表は6月11日に行われた開幕戦で南アフリカを2―0、18日には韓国を1―0で下して今大会の全48か国中、決勝トーナメントへ一番乗りを決めた。そんな中、メキシコ国内の殺人件数は急減傾向を示している。

 メキシコの治安アナリスト、ダビド・サウセド氏は、現在のメキシコ国内の殺人件数の急減について「〝W杯休戦〟と呼ぶべき現象が起きている」との見方を示した。

 同氏によると、W杯開幕以降、カルテル抗争が激しい州であっても殺人事件や重大な暴力事件が大幅に減少しているという。各地の検察当局の統計にもその傾向が現れていると指摘した。背景には、麻薬カルテル同士の一時的な休戦、連邦政府による大規模摘発の自制などが理由として挙げられている。

 特に注目されているのが、メキシコ最大級の犯罪組織である「シナロア・カルテル」と「ハリスコ新世代カルテル」の動向だ。

 サウセド氏は「両組織が全面的な和平を結んだとまでは言わないものの、少なくともW杯期間中は正面衝突を避けているように見える。政府側についても、大物麻薬王の逮捕発表、大規模な麻薬押収、カルテル幹部を狙った軍・警察作戦が目立って減っている」と指摘した。

 実際、2月22日にハリスコ新世代カルテルの創設者であるネメシオ・〝エル・メンチョ〟・オセゲラ容疑者が死亡した際には、まるで戦争のような衝突が発生し、70人が死亡。カルテル側は報復として車両や商店への放火を繰り返した。この事態を受け、一時はW杯開催地からメキシコを外すべきではないかとの懸念も当局に浮上したほどだ。

 カルテルが休戦協定し、政府もカルテルを摘発しないことで、政府は治安改善を演出できる一方で、カルテル側もビジネスに集中できるという、一種の〝麻薬平和〟が形成されている可能性がある。もちろん、同氏はこれを恒久的な平和とはみておらず、W杯終了後に再び暴力が激化する可能性も否定していない。現在の静けさは「大会期間中だけの休戦にすぎないかもしれない」と警告している。