北中米W杯は11日に開幕する。本番を目前に控え、FW上田綺世(27=フェイエノールト)は、2022年カタールW杯の悔しさを晴らすべく静かに闘志を燃やす。法大サッカー部で上田を指導した元監督の長山一也氏(44=現FC・ISE―SHIMA監督)が、日本が待ち望んだ最強ストライカーの“誕生前夜”を明かした。
上田はフェイエノールト3年目の2025―26シーズンに、持ち前の得点力を爆発させた。25ゴールでリーグ得点王。欧州主要1部リーグの日本選手では、22―23年シーズンにスコットランド・プレミアリーグで得点王となったFW古橋亨梧(当時セルティック)に続き2人目の快挙だ。
日本最強の点取り屋と言ってもいい活躍ぶりは、北中米W杯での大爆発にもつながっていきそう。当地での事前合宿に入ってからも、トレーニングでシャープな動きを披露。森保ジャパン不動の1トップは、前回大会で1次リーグ第2戦コスタリカ戦で前半のみの出場で無得点。そのリベンジを目指す2度目の大舞台に向けては「自信を持ってプレーできることの幅は広がっている」と進化を実感している。
そんなストライカーは、鹿島学園高(茨城)から進学した法大で腕を磨き、在学中にJ1鹿島でプロデビュー。長山氏は大学時代の成長について「ヘディングシュートなど非凡なものを感じていましたが、大学レベルでのポストプレーなど技術的なところが整理されておらず、守備のところも欠けている部分がありましたが、それらは徐々に修正されていきましたし、長所はさらに伸ばした印象です」と振り返った。
進化を見守る中で、トップ選手になるための“素質”があることに気づく。「やっぱり吸収力は、上に行く選手の条件。指導者が『こういうことをやったほうがいいよ』という話をするのは、できていないことを伝えますよね。それを素直に受け入れない選手もいますが、彼はまずやってみて、できなかったら、また工夫します。彼は足りないことを自己分析して、何をすべきか考えて成長し続けられるのです」
その一端は、リーダーシップに関するアドバイスをしたときにも表れた。「2年生が終わったくらいのとき、大学サッカーだと物足りないくらいのレベルになっていましたが、リーダーシップは、まだ足りない部分でした。彼にその話をしたら、練習や試合でチームを引っ張るようになっていきましたし、練習後のシュート練習で後輩を指導するようにもなりました。これもさっき言った吸収力でしょう」
選手として成長を続ける中、大学3年時に前倒しでプロ入り。恩師は当時の経緯を「(19年5月に初のA代表選出となった)南米選手権に行く前、本人から話がありました。彼が成長していく中で早めにプロへ出さないと成長スピードを止めてしまうと思っていたので、準備はしていました。ただ、本人とは大学は卒業するようにと約束はしました」と説明した。
A代表デビューの南米選手権は決定機を決め切れず、鮮烈な印象を残せなかったが、ひそかに手応えをつかんでいたという。長山氏は「本人は“シュートを打つところまでいけるんだ”という前向きな感覚でした。成長のきっかけになったと思います」。それは後のキャリアで証明しているだけに「うまくいかなくても、結果を出すところまで持っていける選手。今回のW杯は結果を残してくれるでしょう」と期待した。
再び戻ってきたW杯。進化を続ける最強ストライカーが、日本に歓喜をもたらすゴールを決めてみせる。












