名門の危機を救う特効薬は、まだロサンゼルスに閉じ込められている。ヤンキースは主砲アーロン・ジャッジ外野手(34)の思わぬ長期離脱で激震が走っており、いまだ何の解決策も見いだせていない。ジャッジは右脇腹の第一肋骨疲労骨折と診断され、4~6週間後に再検査を受ける予定。復帰時期が決まるのはその先で、早くても2か月前後の不在となる可能性が高い。
5日(日本時間6日)のレッドソックス戦(ヤンキースタジアム)は3―5で敗れ、37勝26敗でア・リーグ東地区2位のチームは首位レイズとの差も1・5ゲームに広がった。心臓部を失ったまま2年ぶりの地区Vを狙えるかと問われれば、その答えは限りなく厳しいと言わざるを得ない。
そこで米メディア「ヘビー」が取り上げたのが、エンゼルスのマイク・トラウト外野手(34)獲得案だ。ヤンキースアナリストとして知られるジェイク・エルマン氏は同記事内で、将来の殿堂入りが確実視される超大物をヤンキースが大型トレードで狙うべきだと主張。確かにジャッジ不在の穴を埋める緊急補強としては、これ以上ない名前である。
トラウトはMVP3度、オールスター11度の球界を代表するスター。12年総額4億2650万ドル(約682億円)の大型契約を結んでいる。契約の8年目を迎え、今季も打率2割4分、14本塁打、31打点を記録している。全盛期ほどの爆発力ではなくとも、ジャッジ復帰後も打線の厚みを増す存在になり得る。世界一を狙う名門には、あまりに分かりやすい「答え」だ。
だが、この夢物語には巨大な鉄扉がある。エンゼルスのアルテ・モレノ・オーナーだ。米スポーツ専門局「ESPN」のジェフ・パッサン記者は、トラウトがトレード可能な存在であっても、モレノ・オーナーがフランチャイズプレーヤー放出の姿勢を変えた兆候はないと指摘している。エンゼルスは今年もポストシーズン進出が厳しい情勢。トラウト自身も2014年以来、10年以上も大舞台から遠ざかっている。それでも放出されない。事実上の〝幽閉状態〟だ。
本人が移籍を強く求めている気配もない。エルマン氏も「豚が空を飛ぶ可能性の方が高い」と皮肉るほど、ヤンキース入りの現実味は薄い。エース右腕のゲリット・コールは「アーロンは我々にとって大きな存在」と語り、チーム全体の奮起を求めたが、精神論だけで埋まる穴ではない。外野手の有望株スペンサー・ジョーンズの昇格で当面をしのぐとしても、代役探しは避けられない。
最適解は見えている。だが手は届かない。ヤンキースの緊急補強戦線は、トラウトという禁断の名前を前に、現実の冷酷さを突きつけられている。













