米・イスラエルとイランの戦争が続く中、トランプ政権はイランに対し、15項目の停戦計画案を提示した。米国側は近日中にもパキスタンのイスラマバードで対面の和平交渉を実施するよう働きかけているという。交渉が進むのか、戦争が続くのか予断を許さないが、ここで俄然注目を集めるのが仲介国のパキスタンだ。なぜ、同国が仲介するのか。

 イランは23日、仲介国のパキスタンを通じて、15項目の計画を受け取ったとされる。米国側が提示した内容は、交戦終結、ホルムズ海峡の再開、制裁の解除、核開発を追求しないこと、親イランの代理勢力への支援中止などだという。

 これまで中東でもめごとや紛争が起きた際、仲介してきたのは、カタール、オマーン、サウジアラビア、トルコ、エジプトなどだった。なぜ、今回はパキスタンなのか。

 パキスタンは非NATOだが、米国と同盟を結んでいる上にイランと国境を接している。さらに核保有国という事情もあるようだ。

 米国事情通は「パキスタンは、軍トップのアシム・ムニール陸軍参謀長が事実上、権力を握っています。パキスタンは、国内に米軍基地がないので、今回イランによる湾岸諸国のようにミサイル攻撃を受けていません。また、2022年から軍のトップを務めるムニール氏は、インドとも交戦した経験があり、〝戦争の言語〟をよく分かっています。今回は水面下の和平交渉ではなく、戦争の強制的な収束が求められているので、適任ということでしょう。トランプ氏も『お気に入りの将軍』と言っているようです」と語る。

 ムニール氏が権力を持ったのはここ最近のようだ。パキスタンメディアなどによると、昨年5月のインドとの交戦「4日間戦争」で、フランスやイスラエルの最新兵器を持つインドに対し、パキスタンは中国製の兵器で互角以上の戦果を残した。その成果をたたえ、ムニール氏は、パキスタン史上2人目となる五つ星将軍に昇進した。

 そして、昨年12月、議会が急きょ承認した憲法改正により、ムニール氏は新設された「統合軍司令官」に就任し、陸海空軍および核戦力を統括する権限を得たという。

 パキスタンメディアなどは「憲法クーデターで王になった。パキスタンで過去に軍事独裁者が持っていた特権に匹敵する」と報じたほどだ。

 軍事事情通は「軍人のムニール氏は、イランのイスラム革命防衛隊と密接な関係を持っているため、元革命防衛隊将軍で現在のイランの実質トップであるモハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長とすぐにパイプができたのです」と言う。

 また、パキスタンが米国と同盟関係にあるのも、ソ連のアフガニスタン侵攻や9・11で米国がアフガニスタンで戦争した際、経由地や補給ルートでパキスタンが重要だったという経緯がある。

「パキスタンは核保有国なので、イラン、米国ともわたり合える。そして、ホルムズ海峡経由の石油に依存しているので、本気で仲介したいのです」と同事情通は指摘する。

 一方、米国防総省は数千人の海兵隊員、精鋭空挺部隊、そして強襲揚陸艦を中東に派遣している。これがイランに対する交渉圧力なのか、さらなる攻撃への準備なのかは現時点では見通せない。

 交渉の行方はいかに――。