【取材の裏側 現場ノート】国際大会の最高峰「WBC」でプレーする意義をかみ締めて、今回もグラウンドに立つ。前回大会に続く世界一を目指す「侍ジャパン」の周東佑京外野手(30=ソフトバンク)は、亡き母の野球愛に導かれて今がある。

 2024年春、最愛の母と死別。その1年前に開催されたWBCで、闘病中だった母は東京での1次ラウンドにかけつけ、米・マイアミでの決勝ラウンドはテレビの前で声援を送ってくれた。日の丸を背負っての世界一に、姉から「お母さん、元気を取り戻したよ」と連絡をもらった時は、恩を返せた安堵感と喜びで胸がいっぱいになったという。

 幼少期、周東家の夕食時には巨人戦のテレビ中継がよく流れていた。大のG党だった母は、当時サッカーに熱中していた愛息を応援しつつ、したたかに〝方向修正〟をかけ、今に導いた。育成入団から階段を駆け上がり、2大会連続でWBC代表に選出。前回は俊足堅守を武器に終盤のジョーカー的役割をメインに招集されたが、今回は打力の成長を高く評価されて主力として選ばれた。

 世界一に輝いた23年以降、3年連続盗塁王、2年連続ゴールデングラブ賞、昨季は終盤に離脱するまで首位打者を狙える位置をキープするなど飛躍。かつて最愛の母は「華のある選手」に魅せられ、息子を野球の道へと導いた。世界中の「華のある選手」が集結するWBC。今大会は地上波での試合中継がない。それを理解した上で、周東はこう言う。

「人の目に触れる回数が多ければ多いほど人気は上がる。人の目に触れなければ人気は下がる。ただ、映像だけでは伝えきれないものがある。新聞や活字メディアだからこそ伝えられる『舞台裏』があると思う。目に見えることがすべてじゃない。何もやってなくて結果が出てないわけじゃない。裏でやっていて結果が出ていない、では捉え方は違う。そういう報道に期待しています」。

 今回のWBCで周東がつける背番号「20」は、少年時代の思い出がつまった番号。母が教えてくれた野球の魅力を伝えるべく、今大会もグラウンドを疾走し、ファンの視線を釘づけにするはずだ。舞台裏に光を当て、周東の思いに応えたい。(ソフトバンク担当兼侍ジャパン担当・福田孝洋)

記念撮影を行う侍ジャパン
記念撮影を行う侍ジャパン