〝昭和100年〟という節目が終わり、2026年がスタートした。トランプ米大統領の再登板やロシア・ウクライナ戦争の長期化など、世界は再び力の論理が前面に出る時代に入った。国内では高市早苗政権が発足し、選挙や政治をめぐるSNSの影響も語られる。世界はこの先どう変わるのか――。元外務省主任分析官の佐藤優氏に、帝国主義化する世界、日本政治の現在地から〝足元の平和〟までたっぷりと話を聞いた。(全3回中の1回目)

インタビューに応じた佐藤優氏
インタビューに応じた佐藤優氏

 ――2025年1月には2期目のトランプ政権が始まり、いわゆるトランプ関税で世界を揺るがしました。また、国内では10月、自民党の高市早苗氏が憲政史上初となる女性の首相に選ばれました。激動の2025年をどのように捉えていますか

 佐藤優(以下佐藤) 国際政治自体が100年前に回帰して、帝国主義的になってきた。世界の軍事費の膨張、それから実際にロシア・ウクライナ戦争が続き、ほかにも戦争が起きていることがその証左です。ただ、私は世界大戦にはならないと思います。どうしてかと言うと、それはやはり核兵器があるから。逆に言うと、限定された形だと戦争は起こります。

 ――高市首相が11月の衆院予算委で述べた「存立危機事態」発言で、日中関係が急速に悪化した

 佐藤 高市首相は一連の発言の中で「戦艦」という言葉を使いましたが、現代の中国には戦艦というカテゴリーの艦艇は存在しません。官僚のレク(事前説明)を受けていればこんなことは起きなかったが、高市さんの脳内にだけ中国の戦艦が存在しているような…、そうした意味で高市政権は全体的に軽い。物価高対策を含め、この先国民の生活が良くなるとは思えません。

 ――それでも就任以来、高市政権は高い支持率を維持しており、最近では早期解散論もささやかれている

 佐藤 高市さんは派閥の領袖ではないし、リアルな権力基盤を持ちません。一応、麻生派も高市さんを応援していますが、いつ寝返るかわかりません。2026年に選挙をやりたくないというのが高市さんの本音だと思います。衆院定数(465議席)の約3分の2が小選挙区でしょう。(自公の連立解消で)今まであった1~2万の公明票が動かなくなるということがどういう意味を持つか。各選挙区でシミュレーションしてみると自民党にとって楽観的な数字は出ていないと思います。そうした情勢だから解散しない。もし選挙に勝てるのならば現時点でもっと踏み込んでいるでしょう。

第66回2025年報道写真展を訪れた高市早苗首相
第66回2025年報道写真展を訪れた高市早苗首相

 ――25年夏の参院選では国民民主党と参政党が議席を大幅に増やし、SNSを参考に投票した人が多く見られました。その後も与野党はSNSでの情報発信を重点化しています。

 佐藤 SNSは実体的な力ではありません。確かに影響はありましたが、それでも選挙の基本になるのは組織力。自民なら業界団体、立憲と国民民主なら母体の連合、公明なら創価学会といったように、(組織は)まだまだ圧倒的な力を持っています。組織力がある上で風に乗る。風だけで当選した議員は選挙を3回抜けられないでしょう。でも組織力があれば一度落選したとしても這い上がれる。風は向きが変わるものだからです。

 ――歴代最長だった第二次安倍政権(在職日数2822日)以降、菅義偉(384日)→岸田文雄(1094日)→石破茂(386日)と短命な政権が続いています。長くやらないとできないこともあるのでは

 佐藤 岸田さんはまぁちょっと長かったですけど、長期政権のあとはそうなるものなのです。小泉純一郎政権(1982日)のあとの安倍さん、福田さん、麻生さんも短かった。高市さんが〝1年の壁〟を超えられるか、今はまだわかりません。長期でないとできないことがあるという指摘はその通りです。外交にもそのことが影響します。選挙を2回やってもなお高市さんが国民の信任を得られるのであれば、習近平も(高市氏を)相手にせざるを得なくなるでしょう。