本当の由来は――。米国・WWEのレジェンド、ジョン・シナ(48)が13日(日本時間14日)の「サタデーナイツ・メインイベント」(ワシントンDC)で引退する。ラストマッチの対戦相手は〝皇帝〟グンター(38)に決まり、2002年6月のWWEデビューから23年半にわたる栄光のキャリアに、いよいよ終止符が打たれる。

 最高峰王座をプロレス史上最多17度獲得し、記録にも記憶にも残る活躍を見せてきたが、リング上では独特のパフォーマンスでも人気を得てきた。中でも「You can’t see me!(見えっこねえ!)」はシナの代名詞と言っていいパフォーマンスだ。右手を広げて高く掲げた後に、倒れた相手に向け自身の顔の前で手を左右に振る。これに合わせ観衆が「見えっこねえ!」と合唱すると、シナがロープに飛んで得意技の「ファイブナックルシャッフル(フィストドロップ)」をさく裂させる。

 パフォーマンスの由来について、シナは2016年に出版された「ハッスル・ロイヤリティー&リスペクト:ジョン・シナの世界」で「『見えっこねえ!』は弟の冗談だったんだ」と説明している。なんでもシナは弟とともに新作アルバム用に新しいヒップホップのビートを試していたところ、大爆笑が起きたという。

「このバカみたいな曲(シナがラップする入場テーマ曲)が流れ、俺たちは踊り始めたんだ。そうしたら弟がビデオで見たあのダンスをマネして、手を回しながら頭を動かしたんだ」

 シナの弟ショーンがダンスをマネしたミュージックビデオは米人気ラッパー、50セント最大のヒット曲「イン・ダ・クラブ」。50が逆さづりで登場するシーンはヒップホップファンにはあまりに有名で、03年に公開されてからYouTubeでは25億回以上も視聴された。ビデオには緑色のヘッドバンドをした男が、右手で顔を隠しながら顔を左右に振って踊るシーンがある。シナはこのダンスをヒントに「少しだけアレンジしたんだ。手の周りで頭を振る代わりに、頭の周りで手を振ったんだ」。これが「見えっこねえ!」につながったのだという。

元々はストリートのラッパーキャラだったジョン・シナ(©WWE)
元々はストリートのラッパーキャラだったジョン・シナ(©WWE)

 奇妙なダンスを披露した男は、50セントが率いたヒップホップグループ「Gユニット」のメンバーで、現在も50のハイプマンとして活躍する盟友トニー・イエイヨーだ。23年には大学女子バスケットボールのスター選手だったエンジェル・リースが「見えっこねえ!」のポーズで相手チームの選手を挑発して大問題になったが、当時イエイヨーは米ニュースサイト「TMZスポーツ」の取材に応じ、リースを擁護した。

 その上で「あのダンスは俺が警察の目から逃れるためにやったんだ。それが全てなんだよね」と由来を披露していた。他媒体などにも明かしたところでは、銃所持などの重罪容疑で警察から追われていた時期に親友のビデオに出演するため、顔を隠しながら踊っただけだったという。それがシナのおかげで、世界中のプロレスファンが知る人気パフォーマンスとなった。

 シナと同世代のギャングスタラッパーは「ジョン・シナも俺から譲り受けたって言ってくれてる。俺はそれでいいんだよ。シナ、エンジェル、みんなに感謝したいね」と話している。