ヒザ前十字靱帯は太ももの骨である大腿骨と、すねの骨である脛骨(けいこつ)をつないでいる。ヒザ関節を安定させる働きを担う靱帯だが、スポーツをしていると損傷することが少なくない。その新しい治療法が開発され注目されている。開発企業に尋ねた。
【健康な腱を切り取ることが必要な現在の手術法】
ジャンプして着地するなどヒザに大きな負担がかかることのあるスポーツでは、ヒザ前十字靱帯を損傷することが多い。サッカーではかなり頻度が高く、ネイマール、ロナウド、小野伸二など多くの著名選手がヒザ前十字靱帯を損傷したと報道されている。中でも小野伸二は1度だけでなく2度もヒザ前十字靱帯を痛めたとされる。
その他、バスケットボール、バレーボール、スキー、野球、柔道、体操など多くのスポーツでも、プロ、アマを問わず選手のヒザ前十字靱帯の一部に傷がついたり、完全に切れてしまったりしがちだ。パリ五輪の体操競技で個人総合の金など多くのメダルを手にした岡慎之助のヒザ前十字靱帯損傷からの復活劇も報道され、人々の感動を呼んだことを記憶している人も多いはずだ。
一度、ヒザ前十字靱帯損傷してしまうと、競技への復帰のために靱帯を再建する手術を行う必要がある。患者さん自身の太ももの裏にあるハムストリング腱や膝蓋(しつがい)腱などの健康な腱を切り取ってヒザに移植し、靱帯として再建する手術である。
靱帯再建手術がうまくいけば、損傷の程度にもよるが8~12か月程度で患者さんはスポーツを再開できる。手術により復帰した選手は数多いが、治療のために健常な腱を採取しなければならない。できれば健常な腱など切り取られたくないのは誰しもだ。
また、切り取ることにより筋力が低下することに加え、痛みや腫れが出たり、運動制限を受けたり、感染症にかかってしまうリスクがある。
【生体由来の組織で人工靱帯を作る新治療法】
さらに問題なのは、小野伸二のように何度もヒザ前十字靱帯を損傷するスポーツ選手もいることだ。再断裂が発生してしまうと、再手術しようとしても患者さん自身に採取できる腱がないというケースも出てくる。
こうした従来の治療法の様々な問題を解決するのがヒザ前十字靱帯再建用の組織再生型靱帯である。これは、動物の腱を使い脱細胞化技術を応用して開発された人工靱帯だ。
「脱細胞化技術とは、簡単に言えば生体組織から細胞を除去し、残った構造を医療に応用する技術のことです」と説明するのは、開発したコアティッシュバイオエンジニアリング(横浜市鶴見区)の城倉洋二社長である。
生体から取り出した組織を界面活性剤や酵素などで処理したり、凍結したり融解したりして細胞を除去すると、細胞以外のコラーゲンなどの三次元構造やたんぱく質を残すことができる。この脱細胞化組織を損傷した組織に移植することによって、組織再生の基となる幹細胞などの生着や増殖を補助して治療を助けることが期待できるという。
同社では、生体組織を用いて脱細胞化技術により人間のケガや疾病を治す医療機器の開発を目指しており、次回はこの組織再生型靱帯がどんなものかを尋ねる。













