福岡・志免町の老舗すし屋「創作寿司割烹 しめ寿し」が仕掛けた“24時間すし自販機”が話題沸騰だ。深夜でも早朝でも本格すしが買える全国初ともいわれる挑戦を支えるのは、冷蔵しても硬くならない特製しゃり。2代目店主の佐々木博文さん(50)は「喜んでもらえればそれで十分」と語る。初代の父・博さん(73)、弟の竜二さん(48)ら家族を含め総勢24人のスタッフとともに、伝統を守りながら新たなすし文化を切り開いている。
すし自販機の設置は3年前。コロナ禍をきっかけに別棟「竜宮城」での総菜販売をやめ、国の補助金を活用して「無人販売で24時間届けよう」と発想を転換した。最初は物珍しさからじわじわ浸透し、今では「帰宅時」「夜勤明け」「法事の急な準備」など幅広い場面で利用される。タクシー運転手や深夜労働者も立ち寄り、地域の“第二のすし屋”として定着した。
最大の魅力は「買ってすぐ食べられる」こと。ギョーザやラーメンの自販機は加熱調理が必要だが、すしは調理済みでそのまま味わえる。店の目の前に設置され、営業時間中に売り切れが出ればスタッフがすぐ補充。年配客にはインターホンで使い方をサポートするなど「地域にもう一つの店舗」として機能している。人気商品は「にぎり寿司(竹)」と「上巻き寿司」。さらにデザートの「自家製和風プリン」も好評で、すし以外を目当てに訪れる客もいる。
挑戦を支えたのが“冷蔵用しゃり”の開発だ。通常のご飯は冷蔵で硬くなるが、弟の竜二さんと1年かけて研究し、冷蔵しても軟らかさを保つ独自ブレンドを完成させた。もともとは、すしケーキの通信販売用に研究していた技術でこれを自販機に応用。「弱点を乗り越えた」と胸を張る。店内は福島・会津産コシヒカリ、自販機用は企業秘密のしゃりと炊き分け、ネタは毎朝長浜市場に足を運んで仕入れている。こうした工夫が「いつでも同じ味」を実現している。
すしケーキも名物だ。生クリームが苦手な子供に誕生日ケーキを食べさせたいという思いから誕生。ネタの鮮やかな色合いを生かして華やかに仕上げ、バースデーやひな祭り、バレンタイン、クリスマスなどのイベントで大好評。祝いの席を彩る一品として親しまれている。わらび餠も根強い人気で「すし屋なのに甘味目当てで来るお客さんもいる」と佐々木さんは笑う。食を通じた楽しさを届けたいという思いが自販機にも表れている。
厨房では巻きすしの具や卵焼き、いなり揚げもすべて手作り。生エビは1日600匹を串打ちしてボイルし、魚は塩もみや酢洗いで生臭みを徹底的に除く。効率を優先して既製品を使う店が増える中、「手抜きはしないのがウチの流儀」と言い切る。夜中まで続く仕込みも「お客さんの笑顔のためなら当然」と語る姿勢が息づいている。
価格へのこだわりも変わらない。原材料や人件費の高騰が続くなかでも、初代・博さんは「お客さんに負担をかけたくない」と譲らない。3年前の値上げ時も極力低価格に抑え、以降は据え置きのまま。「既製品に頼れば楽だが、ウチはすべて手作り。手間をかけても値段を守るのがスタイル」と博文さん。こうした姿勢が地域の信頼を支えている。
「すしはカウンターで握るもの」という常識を破った挑戦と、すべてを手作りで守る伝統。全国でも例を見ない「24時間すし自販機」は、志免町から発信される新しい食のかたちとして、今後ますます注目を集めそうだ。
















