ローソンが“鍋さばきロボ”を導入して約1か月が経過した。このたび流通ウォッチャーの渡辺広明氏(58)が導入店舗を訪れて“1か月診断”を実施し、調理ロボを使ったメニュー開発に注力するキーマンに直接取材することに成功した。「中食」と「外食」がボーダーレスとなってきたこの世界で起きていることとは――。
「鍋さばきロボ」が導入されたのは東京・大塚駅にほど近いローソン北大塚一丁目店(グリーンローソン)。2022年11月にオープンした同店は遠隔地からのアバター接客などDXを活用した新しい働き方の提案、レジ袋やフォーク、スプーンの配布を取りやめて環境負荷を軽減するなどローソンの新たな取り組みの“実験店”となっている。
今回、ローソンが導入したのはTechMagic社(東京・江東区)が飲食店用に開発した「I―Robo2」。強い火力が求められる中華料理も調理可能で、付属のタッチパネルに記された通りに食材と調味料を投入すれば自動的に「炒める↓混ぜる」の動作が行われ、約2分で炒飯や野菜炒めが完成する。しかも調理終了後には鍋部分が自動洗浄されるというすぐれものだ。
ローソンインキュベーションカンパニー事業開発部参事の鈴木嘉之氏が導入経緯を明かす。
「I―Roboを初めて見たのは2年前。『調理ロボを見てみませんか?』と紹介を受けて本社まで見に行きました。“炒める”ことができるようになったらまちかど厨房の可能性が一気に広がると思いワクワクしました。ただ初代のI―Roboはサイズが大きくてウチの厨房には入らないだろうなと…。I―Robo2に進化してコンパクトになったことでやっと挑戦が決まりました」
コンビニの店内調理には長い歴史がある。1980年代には「蒸す」肉まんに「煮る」おでんが登場していた。現在の主流となっているのはからあげやポテトなどを「揚げる」ためのフライヤーだが、「炒める」だけは高い壁となっていた(ちなみに日本のコンビニで最初にフライヤーを導入したのはローソンで79年3月にアメリカンドッグとフライドポテトを提供開始。のちの「からあげクン」へとつながっていく)。
「コロナ禍だった2021年に実験が始まったゴーストレストランも全国約860店舗(25年7月末時点)まで増え、今も24時間365日営業しています。特に飲食店が少ない地域ではお昼と深夜に多くの注文をいただきます。とはいえ、お客さまは『Uber Eats』アプリからお店を選ぶので時間帯によっては外食がライバルになるという経験が刺激になりました。これまでは電子レンジとフライヤーだけでメニューを作ってきましたが、外食と本格的に戦うために“武器”がいるなと。私はそれが調理ロボなんじゃないかと考えています」(鈴木氏)
渡辺氏も中食と外食のボーダーレス化が進んでいると考える一人だ。
「Uberや出前館といった配達アプリが橋渡し役となっている印象ですね。共働き世帯や単身世帯の増加というライフスタイルの変化が起きていた中で、コロナ禍で外食業界が一気に中食に流れ込みました。食材を中心に売っていたスーパーもまた中食を重視しています。その意味では中食がもっとも“激戦地”なわけですが、カギになるのが装備としての厨房でしょう。『まちかど厨房』を約9600店(7月末時点)に展開しているローソンは“日本最大の弁当チェーン”であると言えるし、コンビニ大手3社の中でも大きなアドバンテージを手にしている」(渡辺氏)
導入1か月で課題も見えてきた。注文を受けてから調理するため店頭のオーダー端末を利用した場合は多少の待ち時間が発生してしまう。さらに炒め油から塩、しょうゆなど調味料の使用量を0・5グラム単位で細かく設定したことで「鍋さばきロボ」に投入するまでの準備に若干の負担が生じているようだ。
これらについて鈴木氏は「帰りの電車の中で野菜炒めをモバイルオーダーしてもらったら、あとはローソン店内でビールなども選んで一緒に受け取って帰れるような流れを浸透させたい」とし、調理前の計測については専用スケールの導入を示唆した。また今秋にはI―Robo2を使ってペペロンチーノのようなパスタメニューの展開も構想にあるという。
最後に渡辺氏は「鈴木さんはローソンの大ヒット商品『プレミアムロールケーキ』の生みの親として業界では有名な仕事人なんです。パスタの後にはデザートも作ってくれるんじゃないかと楽しみにしています」とプチ情報を付け加え、満足そうな笑みを浮かべた。
☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。フジテレビ「Live News α」コメンテーター。Tokyofm「ビジトピ」パーソナリティー。

















