夏は蚊やゴキブリ、マダニなどヒトに対して直接的な被害を及ぼす衛生害虫の活動の最盛期。すでに蚊に刺されてしまった人もいるかもしれないが、虫に関する素朴な疑問をライオンケミカル株式会社が誇る“虫博士”こと旭和也主任にぶつけてやさしく解説してもらった。流通ウォッチャーの渡辺広明氏(58)も驚いた殺虫剤の進化とは――。
【質問①】蚊取り線香とか殺虫剤ってイマイチ効果を感じられないときもあるけど、本当に効いてます?
旭主任 少し難しい話になりますが、蚊取り線香は薬機法で防除用医薬部外品という扱いで、有効性と安全性が厳格に審査されます(管轄は厚労省)。弊社が2019年に発売した「ライオンかとりせんこう厚太」だと屋外でも半径3メートルで蚊の忌避効果が認められたので、業界で初めて「屋外での使用」に関しても効果が承認されました。正しくお使いいただければきちんと効果が得られますよ。
【質問②】蚊取り線香も進化してます?
旭主任 はい。最初の蚊取り線香は除虫菊(シロバナムシヨケギク)に含まれる天然の殺虫成分ピレトリンを使っていました。ただ戦後にはピレトリンを化学的に合成した合成ピレスロイドが主流となります。
このピレスロイド系にはすごく種類があって、常温でも揮散性が高く蚊に対する効果の高いメトフルトリン、ゴキブリに対して効果の高いイミプロトリンなどそれぞれに特徴があるのでシーンに合わせて商品開発をしています。弊社は2018年に初めてメトフルトリンを0・03%使った蚊取り線香を発売しましたが、成分を少なくしつつより効くものに進化したと言えると思います。
【質問③】コンセントにつなぐ電気式蚊取りや置くだけの蚊取りも出たのにやっぱり蚊取り線香が売れ続けるのはなぜ?
旭主任 難しい質問ですね…。やっぱりヒトは無臭(煙やにおいがない)だと使用感を得づらいという側面はあると思います(苦笑)。実際、蚊取り線香の香りの情緒的価値も見直されていて、ここ数年はローズやリーフなど多様化が進みました。とはいえ、無臭のワンプッシュスプレーなどが効かないわけではなく、実際に試験すると蚊が落ちます! 無臭の防虫剤がある中、昔ながらの防虫剤が今も売れているのも同じ理由だと思います。
【質問④】いつか殺虫剤が効かない虫が現れたらめちゃくちゃ怖いけど大丈夫ですか?
旭主任 殺虫剤も日々研究され、新しいものが生まれますし、一般家庭で使う分には心配ないと考えます。ただし、用法用量を守ってご使用いただいた場合に限ります。たとえばゴミ埋め立て地にいるハエは高濃度の殺虫剤を当てられ続け、残った子孫が薬剤耐性を持っていますし、ピレスロイド系に抵抗があるゴキブリ(以下G)も発見されています。昔からあるホウ酸ダンゴの効果は胃腸障害や脱水作用によるもので、通常の殺虫剤よりも耐性はできにくい。Gに対してはフィプロニル配合の毒餌剤が主流になっていて、これは非常に効果が高い(早い)ものです。
【質問⑤】暑いと虫も動けなくなるって本当ですか?
旭主任 私は会社で研究用のGを飼育しているのですが、これは本当ですよ。昆虫も人間と同じでたんぱく質などで体がつくられています。35度を超えると動きが鈍くなりますし、種類によってはもっと低い温度でも。また雨が少なく極端に湿度が低いと体が乾燥して飛べなくなったりしますし、土砂降りにも対応できません。虫が一番動きやすい環境は、種類によりますが梅雨明けですね。
【質問⑥】虫博士が怖いと思う虫は何ですか?
旭主任 ピレスロイド系が効かないスーパートコジラミですね。トコジラミはカメムシの仲間で吸血性昆虫です。薬剤耐性を持つものが多く、そういったものはスーパートコジラミと呼ばれます。暗くなったら出てくるので、海外旅行の際など、いそうな宿では明かりをつけたまま、荷物をビニール袋で密閉して寝ます。
【渡辺広明氏の業界解説】国内の家庭用殺虫剤市場は年間1200億円前後。アース製薬、キンチョーで知られる大日本除虫菊(非上場)、フマキラーが大手3メーカーとして広く知られています。個性的な商品名やCMでブランド認知を図るのがこれまでの定石でしたが一部変化も起きています。食品だけでなくトイレタリー(いわゆる日用品)にまでプライベートブランド(PB)が広がりつつあります。
ただ信頼性が必要な商品群だからNBやOEMのほうがいいかも。今後は蚊媒介感染症でパンデミックが起こらないとも限らないので、トレーサビリティーは大事だと思います。私の生活の中では朝夕に愛犬の散歩をするので虫よけスプレー必須。ペット向けも関心が高まりそうです。
☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。フジテレビ「Live News α」コメンテーター。Tokyofm「ビジトピ」パーソナリティー。
















