「塩をなめながら酒を飲むと、酔いやすくなるってホントですか?」

 30代の酒飲み女子から、そんな質問を受けた。何でも都市伝説的に広まっているらしい。試しに塩の有り無しで日本酒を飲んでみたが、体験的には特に変わらない。ドクターに聞いたところ「塩分がアルコールの吸収や、代謝に直接影響を与えるという科学的根拠は存在しない」とのこと。では何故、そんな噂が広まったのだろう? その理由は2つある。

 1つは塩気の強いつまみによる「飲むピッチの加速」。味付けの濃いつまみは、喉がやたら渇く。その結果、酒のペースが上がる。つまり、塩が直接「酔いを加速」させているわけではなく、単純に飲むスピードが加速することで酒量が増え、酔いが早く回ってしまうのだ。

 そしてもう1つは「脱水による血中アルコール濃度の上昇」である。塩分を摂り過ぎると体が脱水気味になることで、体内の水分量が低下。そのため、いつもと同じ量の酒であっても、血中アルコール濃度が高くなり、酔いの立ち上がりが早くなる。さらに悪いことに、脱水状態になると肝臓への血流が減り、アルコールの分解能力が低下。それによって酔いが長引き、酒が抜けにくくなってしまう。これら2つのことから、塩そのものには酒の吸収を早める作用はないが、「間接的に酔いを促進する」ことがある。つまり噂はまんざら嘘ではないと言えるのだ。

 そんな噂はさておき、注意しなくてはならないのが、塩分過剰摂取によるリスクだ。体内にナトリウムが増え過ぎると、体は水分をためこもうと血液量を増加させ、血圧を上げてしまう。この高血圧が厄介なのは、自覚症状がほとんどないまま、脳や心臓、腎臓といった命に関わる臓器にじわじわダメージを与える点にある。「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」とも呼ばれ、脳梗塞や心筋梗塞、腎不全といった重篤な疾患の引き金になることも。塩が酔いを早めるかどうかより、その塩が「未来の健康にどんな“爆弾”を仕掛けているか」のほうが、よほど深刻なのだ。