飲みの席になると、やたら話を盛るオジサマがいる。SNSのフォロワーが200人しかいないのに自らを「インフルエンサー」と言い、元カノはモデルやフリーアナウンサーなど美女ばっかりだったと自慢。いつもは寡黙なのに、酒が入った途端、急に饒舌になり自分を盛りまくる。こういうタイプは彼に限ったことではない。
しかし、なぜ人は酔っぱらうと「自分を大きく見せたい」と思うのだろう? その理由は「脳のブレーキ」が外れるからだ。アルコールが体に入ると感情を司る扁桃体に作用し、羞恥や不安といった感情を鈍らせる。次に「理性のブレーキ」と言われる前頭前野の働きが弱まり、理性がバビューンとふっ飛ぶ。その結果、「ちょっとくらい盛ってもいいや」となり、理想とする自分を語り出す。これは実際に脳画像研究(fMRI)でも証明されており、酩酊時には社会的抑制が低下し、「自分を良く見せたい」という思いが過剰になる傾向が確認されている。心理学において、このような現象を「自己呈示欲求」と呼ぶ。
自己呈示欲求は、自分に自信がない人ほど顕著に表れやすい。酒が入るとなおさらだ。「また盛ってる」と思われているうちはまだいいが、度を超えるとただの酒グセでは済まなくなる。酔ってついた嘘が自分の中で真実に変わると、やがて演じた自分を保つため、嘘を塗り重ねることに。次第に言動がおかしくなり、現実とのズレが生まれ、最終的に周りの信頼を失ってしまう。これは大きな損失だ。
飲みの席での盛った話なんて、誰も本気で聞いてない。翌朝にはすっかり忘れられているのが常だ。なのに、その場に漂った「しらけた空気」や「乾いた笑い」は不思議と記憶に残る。そう、一番忘れて欲しいところだけが、いつまでも後を引くのだ。酒席での見栄も、酒も、盛りすぎにはご注意を。












