酒を飲み過ぎて吐いたのは、いつが最後だっただろうか。のっけから尾籠な話で恐縮だが、酒量を減らしてから飲み過ぎが原因で吐いたことがない。正直、若い頃は「しょっちゅう」と言っていいほど吐いていた。吐いてスッキリした後、一拍置いてまた飲むという、それはもう無茶なことをしていたものだ。

 そもそも「吐く」という行為は、「生命を維持するための最も重要な仕組みの一つ」だという。そう考えると、酒を飲み過ぎて吐いてしまうのは、カラダからの危険信号であり、「自然に」起こる防御反応と言ってもいいだろう。

 では自然ではなく、故意に吐くのはどうなのだろう? 吐くまでもいかないが、気分が悪く、早く楽になりたいがために指を突っ込んで吐く行為は、酒飲みなら一度はしたことがあるはずだ。素人考えでは、「気持ち悪い状態を長引かせるより、吐いたほうがカラダにいい」と思うのだが、実際は真逆のようだ。ドクターによると、「故意に吐くのはもってのほか」だと言う。

 自然嘔吐の場合、吐く前の準備として唾液が大量に溜まる。実はこの唾液こそが、食道を胃酸や胆汁から守る大切なもの。この準備がない状態で故意に吐くと、食道が傷つくリスクが一気に高まるのだ。食道が傷つくと胸やけがしたり、ひどい時には出血したり、慢性化すると粘膜が厚くなって食べ物が通りにくくなったりするので注意したい。というか、吐き気をもよおすまで飲まないことだ。

 そんなことは分かっているが、つい飲み過ぎてしまうのが酒飲みの性。これに関しては古今東西変わらないようで、5000年前の古代エジプトの壁画にも、吐くまで飲む貴族の姿が描かれている。貴族さまだってこうなのだから、庶民の筆者がたまに飲んでやらかすのは、まぁ仕方がないのかもしれない(言い訳)。