安藤サクラ主演の映画「0.5ミリ」を観て、妙に印象に残ったことがある。それは作中に登場する高齢男性3人が皆酒好きで、ちょっとエッチだということ。若かりし頃は「おじいちゃん」と呼ばれるようになると、性欲は途絶えるものと思っていたが、年齢を重ねるとそうではないことが映画を見てもよく分かる。
作中の高齢男性がこよなく愛する酒には、脳内でドーパミンの分泌を促す作用があり、快感や意欲に関わる神経系を刺激することが知られている。さらに理性のブレーキを弱める作用もあるため、本来の欲望が表面化しやすくなるのだ。加えて、アルコールには緊張をゆるめ、孤独感や不安を一時的に和らげる働きもある。それぞれに孤独感を抱えている作中の高齢男性たち。酒を飲むことによって、性欲だけでなく、「誰かとつながっていたい」という切なる思いが表面化する様子が、何とも物悲しかった。
そもそも「高齢者は性欲がない」ということ自体、大いなる思い込みである。日本性科学会が2014年に行った「中高年セクシュアリティ調査」によると、配偶者のいる男性では60代の78%、70代の81%が「この1年で性行為をしたいと思ったことがあった」と答えている。女性はそれより低いものの、それでも一定の割合が性的関心を持っている。また、アメリカの学術誌「Archives of Sexual Behavior」に掲載された研究では、「高齢者において飲酒量が多い人ほど性的活動が活発になる」傾向が報告されている。こうしたことからも、性欲は若者だけが持つものではないということが分かる。
スクリーンの中で酒を飲む高齢男性たちの姿は、どこか滑稽で、同時に少し切ない。体は老いていくのに性欲は枯れず、かといって若い頃のような勢いもなく、その欲望は普段息をひそめている。だが酒が入ったとき、欲望はふと頭をもたげる。それは決して特別なことではない。性欲は年齢で消えるものではなく、人が生きているかぎり形を変えて残り続ける。酒はその静かな欲望にそっと灯をともす。












