昨今、なじみの立ち飲み屋を久々に訪れたら、キャッシュレス決済が導入されていて驚いた。店主は「手数料が高い」と躊躇していたが、リクエストが多く「ついに」導入。私自身、最近は財布を持たず、スマホのキャッシュレス決済がメインになっていたので、願ったりだった。
しかし、飲み屋がキャッシュレス決済になると、ちょっと困ったことが起こった。それは「飲み過ぎてしまう」ことだ。現金払いだと、財布から紙幣や硬貨を取り出して支払うので、「これだけ使った」という実感が伴う。ところがキャッシュレス決済では、カードやスマホをタップするだけで支払いが終わるため、お金を使った実感が薄くなるのだ。後で明細を見て「えっ、こんな使ったっけ?」となることがしばしばある。
実はこの現象、心理学の概念「支払いの痛み(ペイン・オブ・ペイイング)」で説明がつく。人はお金を使うとき、「こんなに使って大丈夫かな」「あとで後悔しないかな」といった心理的な痛みを少なからず感じている。それが使いすぎを防ぐブレーキの役割を果たしている。しかしキャッシュレスでは、その感覚が働きにくく、「いいや、もう一杯飲んじゃえ」となりがちなのだ。まさに私もこのパターンで、先日もつい飲み過ぎてしまった。
マサチューセッツ工科大学の研究などでも、現金よりクレジットカードで支払う場合のほうが高い金額を受け入れやすいことが示されている。「カード払いのほうが高い金額を受け入れやすい」という結果を見て、ECサイトで現金ではまず買わないお高めの靴を買った自分と重なった(汗)。
キャッシュレス決済はとても便利だ。飲食店にとっても、会計がスムーズになるメリットは大きいだろう。ただ、酒飲みにとってはちょっと注意が必要だ。便利さの裏には、こんな心理の落とし穴もある。キャッシュレスは、予想外にお金を使ってしまいがち。だからこそ、「今日はここまで」と自分でブレーキをかけることも必要なのだ。












