「平成の怪魚、令和に再び!」――。かつて東スポの紙面をにぎわせた“人面魚”が、いま宮崎・延岡で話題沸騰だ。延岡市役所前の人工池で、2年前に1匹だけ確認されていた“親の人面魚”の子世代から、約15匹に“人の顔”のような模様が出現。市民の間では「おじさん顔」「笑ってるみたい」と盛り上がり、SNSでも写真や動画が拡散している。その“令和の人面魚”の真相を直撃した。
「最初は『まさか』と思いました」。池の管理を担う延岡市都市計画課の甲斐凜哉さん(24)によれば、もともと令和3年に人工池にいた約20匹のコイは、建物の改修に伴い一度市内の内藤記念館へ避難し、令和4年度末に戻された。ところが、翌5年5月、1回限りの繁殖で稚魚が大量発生し、現在は約50匹に増加。「その2年前くらいに親の人面魚が1匹いたんですが、その子供が一気に生まれて、気づいたら顔っぽいコイがたくさんいたんです」と振り返る。
模様の“顔らしさ”が目立ち始めたのは令和5年の秋ごろ。親魚も多少顔に見えたものの、子世代はさらに輪郭がくっきりし、特に黄色がかった個体ほど目鼻立ちがはっきり浮き上がる。「光の当たり方で顔みたいに浮かび上がるんですよ。正面より横顔のほうが“人っぽい”」と甲斐さん。職員の間では「童顔よりおじさん顔が多い」との声が多く、眉が濃く見える個体や、頬に影があるように見える個体など表情は十匹十色。甲斐さん自身も「一番おじさんっぽいコイがいるんです」とお気に入りを明かす。
人面魚たちは性格も人懐っこく、池の縁に人が立つとスッと近寄ってくる。「掃除をしていると必ず寄ってくるんです。魚がここまで慣れるのは珍しいし、本当にかわいいですよ」。清掃は月1回、都市計画課の職員が交代で行っており、デッキブラシで藻を取りながら個性派コイを間近で観察する時間は、職員にとって小さな癒やしにもなっている。
平成をにぎわせた「山形・善宝寺の人面魚」の再来と話題になるのも無理はない。甲斐さんも当時の写真を見ており、「あれは確かにすごいです。でも、こちらは15匹と数が多いのが特徴。宮崎県内でも、えびの市に1匹いると聞きますが、群れで見られるのはここだけです」と胸を張る。
では、なぜ一度の繁殖でここまで“顔模様”がそろったのか。観賞魚の専門家は「コイは親の模様が子に表れることが珍しくなく、条件が重なると似た個体が複数生まれることもある」と説明する。また、「親魚に特徴的な模様があった場合、その特徴が子供に受け継がれるケースも多い」との指摘もあり、親の人面魚の特徴が子世代に広く出た可能性が示唆されている。
一方で、雲や木目を顔として認識してしまうパレイドリア現象が影響している可能性も否定できないという。ただ、15匹前後もの人面魚が同時期に現れた点については、「遺伝的背景が作用した可能性が高い」との見方もある。
池のそばには無料のエサが設置されているが、「パンなどを与えるとハトが寄ってしまうので、専用のエサだけにしてほしい」と甲斐さん。通りがかりの市民が足を止める姿も以前より増え、エサをまくと一斉に寄ってくる人面魚を観察しながら、眉の濃さや模様の違いを見比べる来訪者もいるという。休日には親子連れが訪れ、「この子が一番人っぽい」「笑ってるように見える」と声を弾ませる姿も多い。
平成のブームから三十余年――延岡の人工池で静かに泳ぐ約15匹の“令和の人面魚”たち。あなたの“推し”はどの顔? 延岡市役所前の池で、ぜひ確かめてみてほしい。













