新日本プロレスのタイガーマスクが、現役引退を決断した〝真相〟を明かした。6日後楽園大会で行われた棚橋弘至とのデビュー30周年記念試合後に、来年7月での引退を表明。初代タイガーマスクの佐山聡が創設した「スーパータイガージム」出身で、新日ジュニアのトップ選手として一時代を築いた4代目タイガーがいま初めて明かす、リングを下りる本当の理由とは――。

 タイガーは記念試合後のバックステージで来年7月での引退を表明。「デビューした時から佐山先生と作り上げてきたタイガーマスクというものが、自分の中で納得できなくなってきた」と説明した。

 衝撃的な発表から一夜明けた7日、タイガーは取材に応じ、これまで明かしてこなかった〝戦いの裏側〟を語った。引退の2文字と向き合い始めたのは、5年前までさかのぼる。2020年4月、大腸に穴が開く「大腸憩室炎穿孔(けいしつえんせんこう)」の手術を受け、長期欠場。医師からは「プロレスはもう難しい」と言われながら同年12月に復帰を果たしていた。

 しかし現実はさらに壮絶だった。「腸を切らなきゃいけなくて、切った腸をすぐにつなげられず、実はストーマ(人工肛門)にしなきゃいけなかったんだよ。本当は『プロレスはもう無理』と言われていて、目の前は真っ暗。でも俺は絶対に諦めたくなかった」

 引退勧告を受けながらも術後4週間後には道場に向かい、できる範囲でウエートトレーニングを始めた。タイガーは「ストーマをしている方っていっぱいいて、1年後に治せますという人もいる。調べたらアスリートでしてる人とかもいて、そういう例を励みにしてずっと練習をやってきた。そして4か月後の診断で『ストーマを終わりにしましょう』と。4か月ぶりに腸をくっつける手術をして、そこから1か月後にやっと受け身が取れるようになった」と当時を振り返る。

 一時は73キロまで落ち込んでしまった体重を戻し、執念で奇跡の復帰を果たした。しかし影響は小さくなかった。「(手術で)おなかを開けるために腹筋を切ってるんだよ。それ以降、下っ腹に力が入らないから太って見える感じにずっとなっちゃってたし、下半身の踏ん張りも昔のようにいかなくなってきてしまって…。練習でずっと何とかやってきたんだけど、手術から5年、今に至るまで結局自分の納得できるようなものには戻れなかった」と苦悩の日々を明かした。

 それでも苦難を乗り越えて復活を遂げた事実は、タイガーの誇りだ。あえてこのタイミングで全てを告白した理由を「今ストーマにしてる方に勇気を与えたいというのがあって。恥ずかしがることもないし、絶望することもない。戻すことができない人もいるけど、戻せる人がいるのであれば、プロレスという何よりも激しいスポーツに復帰できた人間もいると伝えることで、自信を持ってもらえたら」と説明した。

 1995年7月のデビューから、みちのくプロレスを経て新日本に移籍。実に30年にわたって「タイガーマスク」を貫いてきた。「応援してくれた人がいたから、ここまでできたのは間違いない。だからこそ会社に言ったのは、最後の1年間は『さよならタイガーマスク行脚をしたい』と。今までと何ら変わらず厳しくやっていきますよ、試合も練習も。何も変わらず1年間やっていきます。その上で国内も海外も、行けるところはすべて行きたいですね」。命知らずの虎は、今を戦い走り去る。