「あの時、実はブルペンでひそかなドラマがあったんだ」
2日(日本時間3日)の本拠地ホワイトソックス戦でドジャースのクレイトン・カーショー投手(37)による球史に残る史上20人目の3000奪三振が達成された。その舞台裏で起こった「不思議だがうれしい」現象をアレックス・べシア投手(29)が満面の笑みで語ってくれた。
「5回にブルペンでウォームアップをしていたら、ファンらが押し合いへし合いしながら次に投げる選手を確認していた。そうこうするうちにイニングが終わってしまい、果たして自分がマウンドに行くのか分からずその場に立ち尽くしたんだ…」
この日、記録まで残すところ3奪三振という状態で試合が開始されたため、誰もが、何ならカーショー本人さえももっと早く達成できるだろうと思っていた中で、想像以上に苦戦し、まるで焦らすかのような展開となった。5回表が終わった時点で、カーショーの球数は92球。いつもだったら交代のタイミングだが、あと1つ三振が足りない。
「電話が鳴ってバート(ブルペン担当のジョシュ・バートンコーチ)がとり、自分に向かって、両手で『お前は下がってていい。まだ投げない』ってジェスチャーをするや否や、その場にいた観衆がワーッて大歓声を上げたんだ。カーショーの続投を意味していたからね。僕は自分が登板しないことをあんなに喜ばれたのも初めてだったし、それがうれしかったことも初めてだったけど、とてもクールな歓声だった」
結果的にカーショーは100球目、最後の打者から三振を取り記録を達成。昨今の投手事情から、もしかしたら大リーグで最後の3000奪三振とも言われている。
ベシアはもしも6回に交代していたら「最悪だった」と言う。「だってみんな、今夜、カーショーがやってくれるのを見たかったわけだから。このドジャー・スタジアムで。この象徴的な場所で。電話が鳴ったとき『やめてくれ、行きたくない』って思った。5回表を終えた後、僕はカーシュに『行け行け、まだいけるぞ!』って叫んでいたくらい。続投だと分かった時は心底うれしかったよ。ブルペンの全員が(ファンの大歓声に)腹を抱えて笑ったりして、もう大盛り上がりで最高だった」
恐らくべシアにとっても最初で最後のタイプの大歓声だろう。カーショーがこれまで与えてきた影響について「初めて会った日からそうだけど、カーシュはどんな日も努力を怠らないんだ」とべシア。「1日たりとも手を抜かないし、オフもない。彼と会った時の自分は21歳で、まだ右も左も分からないルーキーだったけど、その時から彼の働きぶりやルーティンを見て、『これが一流選手の姿なんだ』って学んだ。だからこそ、今のカーシュがあり、あそこまでの選手になれたのだと」
スタジアム中が彼を応援し、爆発的な歓声と共に温かさも充満しているような夜だった。日頃は脚光を浴びることを好まないカーショーも、この日ばかりは「どんな記録も、分かち合える仲間がいてこそうれしい」と、感慨深そうに祝福を受け、そんな様子にまた、人々は心打たれていた。













