2023年ワールドシリーズ覇者のレンジャーズが異例の決断に踏み切った。4日(日本時間5日)にチームは本拠地でのマリナーズ戦に8―1で快勝。連敗を4でストップしたものの球団側が突然、オフェンス・コーディネーター(OC)を務めていたドニー・エッカー氏(39)の解任を発表したことで周囲を驚かせた。MLB公式サイトやレンジャーズのお膝元であるテキサスの地元メディア、さらには「ニューヨーク・ポスト」など他の米有力メディアも一斉に報じ、大きな波紋を広げている。

 エッカー氏は21年にレンジャーズのスタッフに加わり、翌22年には攻撃戦略全体を統括するOCに就任。サッカーの概念を野球に取り入れたこの先進的な役職で、一昨年のチーム世界一に大きく貢献した功労者だ。だが、今季は打線の不振が深刻化。ここまで17勝18敗、勝率5割を切ってア・リーグ西地区4位に沈んでいる。

 先発陣防御率が3.09と比較的安定しているにもかかわらず、打率2割2分8厘はMLB全体25位、OPS6割4分4厘はワースト4位と打撃陣は停滞感を強めていた。

 レンジャーズのクリス・ヤングGM(45)は「熟慮の末、選手に新たな声が必要だと判断した」と声明を出したが、開幕からわずか40日未満というタイミングでのスタッフ解任は極めて異例。チームを率いる名将ブルース・ボウチー監督(70)も、かつてパドレスやジャイアンツで長年采配を振るった自身の経歴の中で、シーズン中にコーチ解任が断行されたのは今回が初めてだという。

 事態の裏には、マーカス・セミエン内野手(34)やアドリス・ガルシア外野手(32)といった主力打者の不調、さらには新加入のジョク・ピーダーソン外野手(33)や、すでにマイナー降格となったジェイク・バーガー内野手(29)ら補強選手の低迷も影を落とす。得点力の低下が、昨季との明確な落差として表れている。

 そもそもオフェンス・コーディネーターという役職自体が、野球界ではまだ試行錯誤の段階にある。得点の最大化を狙い、データ分析と打撃・走塁戦略の融合を目指すこのポジションは、パドレスやブルージェイズなどでも導入例があるが、打撃コーチとの役割があいまいな面も指摘されていた。エッカー氏の電撃解任は、この新たな職務への〝注意喚起〟あるいは〝処方箋〟としてMLB全体にも影響を与えそうだ。

 2年ぶりの世界一奪回を目指す2025年シーズン。早すぎる荒療治は、果たして起爆剤となるのか、それとも混乱の序章なのか。チームの巻き返しに注目が集まる。