大いなる挑戦のメリットは――。無差別級で争われる柔道の全日本選手権(29日、東京・日本武道館)、男子66キロ級で五輪2連覇の阿部一二三(27=パーク24)は2回戦で100キロ超級の鈴木太陽(天理大4年)に大内返しで一本負けを喫した。それでも1回戦で81キロ級の佐藤佑治郎(山形県警)に背負い投げで一本勝ち。金メダリストの意地を見せつけた。

 出場に迷いはなかった。重量級選手との対戦はケガと隣り合わせだが「(パリ)五輪が終わってから(今年の)全日本選手権は出ようと思っていた」。2回戦で対戦した鈴木の体重は約120キロ。阿部と約50キロ差があった中でも「投げにいきたい思いが強かった」と攻めの姿勢を貫いた。最後は大内刈りを返されて敗れたものの「自分の柔道で試合ができたので悔いはない」と晴れやかな表情を浮かべた。

 今後は再び自身の階級での戦いに舞台を移す。6月には世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)を控える上で、全柔連の強化関係者は「軽量級の選手が全日本にチャレンジするなら今しかない。今は五輪から一番遠いし、来年、再来年になると選考のポイントとかも意識しないといけなくなるので」と決断の経緯を推測。さらに、多くの選手を追う立場として試合に臨んだことで「普段は自分の階級で負けられない分、今大会で挑戦する気持ちを思い出せたのでは」と利点を挙げた。

 重量級の選手との組み合いを通じ、阿部自身も「挑戦者の気持ちがすごい大切だなと、改めて気づいた」と学びを得た。「戦いは始まっている」と3連覇を見据える3年後のロサンゼルス五輪へ、今大会の経験を未来につなげていく。