元日本代表FW武田修宏氏(57=本紙評論家)がヴェルディ川崎(現東京V)時代の後輩で、アジアチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)準々決勝(27日=日本時間28日、サウジアラビア)アルサッド(カタール)戦に臨むJ1川崎の長谷部茂利監督(53)とサッカー談義を繰り広げた。

 武田氏(以下武田)ルーキーでヴェルディに入ってどう思った? 当時はカズ(三浦知良)さんもラモス(瑠偉)さんもいたけど。

 長谷部監督(以下長谷部)みんなうまいし、速いし、緊張感は高かったけど…。チームに何でゴールが取れるんだろうって選手がいたんですけど、理由を聞いたら「そこににおいがするんだよ。わかるだろ?」って。そんなこと言われても。自分は組み立てとか、点を取ってもらう役割だったのでFWの考えていることはわからない。今は少しわかりますけど。

 武田 オレ? そんなこと言ってたっけ? 覚えていないよ。ストライカーの感覚を言っているだけだからな。ところでさ、指導者として実績をつくったけど、これからが大変じゃない?

 長谷部 監督は結果で判断されるので。でも自分のいいところは気負いもせず、いつも「大丈夫だろ」って感覚なので。試合をするのは選手、自分ではない。良いオーガナイズすればいいかなって思いは強いです。

 武田 選手への伝え方は意識している? 選手で話し方を変えたりとか。選手はプライド高いし、呼んで話をするときもある? やらせたいこととか落とし込むことは大事になる。

 長谷部 丁寧に話をするだけ。「嫌だな」って思われないようには注意します。それに選手はスタメンでなければ納得していない。少しずつ話しながら。出番の少ない選手に『試合たくさんあるんで。必ずチャンスはある。やってもらわないと困る』と言ってます。

 武田 結果が出ないときもある。そうなると出番のない選手たちの不満が高まってくる。その辺はどうなの?

 長谷部 そこも大事なんですけど、あんまり気にしすぎない。指導者とか恩師に感謝するのは「あとで」なんですよ。指導を受けているときは『なにくそ』って。プロの監督というのは嫌われて当たり前。そういう感覚です。選手に気に入られようとする指導者は、基本的にはうまくいかない。それは見てきている。

 武田 若い選手も育てないといけないし、試合も勝たないといけない。すでに多くの選手を起用しているけど、その辺はどんなイメージで決めていますか。

 長谷部 多くの選手にたくさん試合に出てもらっているけど、コンディションが良い選手を使いたいというのが一番。疲れているうまい選手よりも、走れて、やる気のある選手。かつて、うまい選手が多いチームで「走れる選手を使えばいいのにな」って思っていたけど、実際にそのチームは下降線になった。

長谷部茂利監督は「創」のひと文字で自分を表現
長谷部茂利監督は「創」のひと文字で自分を表現

 武田 漢字ひと文字で自分を表現してほしい。

 長谷部「創」ですね。「つくる」という言葉が好きで「創造」って単語がすぐに出てくると思うんですけど。新しく何かを「つくる」ということが好き。初モノが好きなんです。この間、初めてアウェーで浦項(韓国)に勝ったんですけど、そういうのです。

 武田 ちなみに自分は「恕」です。思いやりって意味ですけどね。ところで、ストライカーは個性的な選手が育ってきていない。

 長谷部 大きくて速くてうまいが世界で通用するストライカーの条件だと思いますけど、日本人は体格的に難しい。極論ですけど、日本でやるサッカーの試合はすべて2トップにするとか。素養のある人はずっとFWやらせるとか。ただ、今も昔もシュート練習で外してばかりの選手は、試合でもシュートが入らないですね。

 武田 将来は? いずれ日本代表とか五輪代表の監督候補に挙がると思ってますけど。

 長谷部 ACLEやJリーグで優勝すること。ルヴァンカップ優勝は1回だけありますけど、まだリーグ制覇はないので。うまくて強いチームでも、優勝するには運みたいなものも必要になります。

☆はせべ・しげとし 1971年4月23日生まれ、神奈川・横浜市出身。地元の桐蔭学園高から中央大学に進み、94年にV川崎(東京V)入り。ラモスやビスマルクなど層の厚いMFで多くの出場機会を得た。97年に川崎、98年に神戸、2001年からは千葉でプレー。引退後の06年から神戸でスカウトや指導者となり、18年に水戸監督に就任。20年に福岡監督としてルヴァンカップを制覇し、25年から川崎の指揮官を務める。173センチ、69キロ。