今季J1で快進撃を見せている湘南・山口智監督(46)は、どのようにチームを導いているのか。元日本代表FW武田修宏氏(57)が、かつてのチームメートでもある指揮官と対談が実現した前編では、チームの実情など〝本音〟で語り合った。
【武田修宏氏×J1湘南・山口智監督 本音トーク(前編)】
武田氏(以下武田)久しぶり、智…じゃないな。もう山口監督って呼ばないとな。湘南は開幕から好調だけど、監督5年目のシーズンを迎えて、いかがでしょうか。
山口監督(以下山口)やるべきことを細分化して整理しました。戦術や自分たちの強み、やり方…。そして組織力を自負しながら戦おうと。やることが明確になり、より意識を高く持って取り組んでくれたのが一番大きいです。そこが結果につながり、選手も自信になっています。
武田 クラブ予算も限られている中で、強化はどうしているの?
山口 そこは大変ですよ(笑い)。予算規模で言えばJ1で下位、J2でウチよりも多いチームもあります。なので、お金ではなく、今いる選手をどう成長させ、どう組織づくりし、どう個人の良さを出すか。そこに気を配っています。
武田 日本代表の森保一監督は組織のために動いてくれる選手を選考していると話していました。
山口 ウチは選択肢が少ないので(笑い)。グループでやることはマストでやる中、選手を選ぶときに組み合わせを大事にしています。それぞれの良さを出す仕組みをどうするか。急にうまくならないので、苦手な部分を補える組み合わせ、組織づくりですね。
武田 補強もできず、それでもやりくりするしかない。毎年、厳しい戦いだけど、残留争いってどんな気持ち?
山口 やれることを出し切ろうという気持ちで。選手もそこに反応してくれる。外野にいろいろ(批判的なことを)言われるのもあって、メンタル的にしんどいですけど。やるしかないなって。
武田 腹をくくってんだね。厳しい中で踏みとどまっているのは、監督が凛としているからかな。指揮官が自信をなくしたら選手たちは敏感に感じるから、ピリッとしていないといけないよね。
山口 自分は弱みを見せないというより、自分たちが持っているものを見直し、しっかりと出せるようにしています。だから普段から大崩れせずにやれているのかも。
武田 今の選手って終わってから練習しないですぐに帰る人が多い。そこはどうコミットしているの?
山口 こっちがやってもらいたいこともあるし、やらせたいところもあるけど、それをどう本人が納得する形でうながせるか。一番気を付けていること。やってもらいたい事をどう伝えるか。まず組織として伝えるところからスタートし、細分化しながら言い方とか伝え方も考えています。
武田 言い方にも気を付けないとね。
山口 若い時は自分でプレーしながら示すことができたけど、説得力を持った指導者になりたいので。しっかりと話をしています。そこは自分にとって大きなポイントになります。
武田 それと選手を育てても、すぐに引き抜かれてしまう問題もある。
山口 そこにはお金の問題もあると思います。他のクラブから見たら買いやすいですから。
武田 選手を育てて強いチームに勝ちたいというタイプの監督もいるし、いろいろなスタイルがあるじゃん。影響を受けた指導者とかいる?
山口 影響ではないですけど、G大阪時代に監督だった西野(朗)さん。超攻撃的なスタイルを貫いていた中で何よりブレない。マネしているわけではないですけど、染みついたものがあるかも。負けようが点取られようが「攻撃だ」という中で結果も出てましたから。
武田 西野さん、そんな感じするよね。信念を曲げないイメージ。そこは似ている部分かも。
山口 それはあると思います。あと強烈だったのは(シドニー五輪代表兼日本代表監督だったフィリップ)トルシエさん。今ならパワハラですよ。フラット3のラインコントロール練習の時、むかつきながらやっていたんですけど。ベースをどう伝えるかという部分で影響はあったかも。ただ今の時代、トルシエさんのように「やれ」ではムリだと思います。
☆やまぐち・さとし 1978年4月17日生まれ。高知県高岡郡出身。小学生でサッカーを始め中学卒業後に地元を離れて市原ユースに所属。96年3月にJリーグ初の現役高校生デビューを果たした。2001年にG大阪にレンタル移籍し、02年に完全移籍。06年にオシムジャパンで日本代表に初招集された。その後に千葉や京都でもプレーし、15年シーズンで現役を引退し、指導者に転身。G大阪のトップチームコーチを経て21年に湘南コーチ、同年9月、監督に就任した。178センチ、74キロ。














