活躍しなければならない理由は〝古巣〟にこそある。MLB挑戦から1年で日本球界復帰を決断し、ソフトバンクに加入した上沢直之投手(31)。古巣・日本ハムからもオファーがあった中でライバル球団を選択し、大きな物議を醸した。新天地で再起を期す右腕はどんな思いで汗を流しているのか。本人を直撃した。

 日本ハムからマイナー契約で海を渡り、メジャーでは右ヒジの故障などもあって2試合の登板に終わった。ポスティングシステムで球団側に支払われた譲渡金は約92万円。少額だったことをはじめ、NPB復帰に当たって古巣ではなく、4年10億円(推定)を提示したソフトバンクを選択したことで多くの批判を浴びた。

 上沢の決断は現行制度から逸脱したものではない。ただ、米球界を経由し、FA制度の〝抜け穴〟を突いたかのような移籍劇に、上沢を送り出した新庄剛志監督(53)が「悲しい」「育て方が間違ったのかな」などと公言し、ファンも一斉に怒りを爆発させた。20日にはプロ野球選手会の森事務局長が、NPBとの事務折衝を終えた後に「球界関係者の影響力のある人の発言で、誹謗中傷につながる。やめていきましょうという話をした」と語るなどいまだに尾を引いている。

 上沢も自分に吹き荒れる逆風を自覚しつつも、ソフトバンクの宮崎キャンプで顔を合わせると「久しぶりですねえ」と吹っ切れた表情を見せた。

 国内復帰を決めた上沢に届けられたオファーは日本ハムとソフトバンク。昨年9月に帰国して以降、古巣の厚意もあって自宅がある札幌の球団施設を借りて練習拠点としていたことも事実だ。移籍先を決めるまでに何度も家族会議を開き、信頼を寄せる日本ハムのOBや先輩たちに何人も相談した。自ら設定した期限の「1~2時間前まで本当に悩みました」というが、最後は腹をくくった。

 暴風がやむことはなかったが、日本ハムの恩人たちは自分の決断を尊重してくれたという。入団時からの恩師で前監督の栗山英樹CBO(63)と、去就を気にかけてくれた吉村チーム統括本部長だ。上沢によれば重い決断を電話で伝えると、こんな言葉が返ってきたそうだ。

「そんなことは全く気にしなくていい。お前が決めた道ならば、それに向かって頑張ってほしい。むしろまた球場で、一軍の試合で会えるのを楽しみにしている。こちらは、そうであってほしいと思っているから」

 背中を押してくれたとなれば、やるしかない。いずれは古巣・エスコンフィールドのマウンドに立つ日も訪れるだろう。上沢もブーイングは覚悟している。

「〝ファイターズの上沢〟を応援していたのであって、それ(ブーイング)はそれで仕方ないこと。結局、どこに行ってもやるしかない。応援してくれている人はずっと応援してくれているし、そういう人のために、やっぱり上沢っていいピッチャーだったんだなっていう姿を見せたい」

 退路を断ったプロ14年目の挑戦が始まる。