自民党の二階俊博元幹事長(85)が25日、次期衆院選に出馬しないことを表明し、永田町に衝撃が走った。当選13回を数える大ベテランで、長期政権となった安倍内閣を党から支え続けた。大所帯の二階派を率いてキングメーカーとも称された二階氏の最後の一手はどうなるのか。

 党本部で開いた記者会見で二階氏は「政治不信を招く要因となったことに深くおわび申し上げる。政治責任はすべて監督責任者である私自身にある」と、二階派を巡る裏金問題の責任を取ったと説明した。

 岸田文雄首相は裏金問題に関わった議員の処分を検討しており、安倍派幹部だけでなく二階氏の処分内容も注目されていた。二階氏は処分が出る前に自ら先手を打った形で、これには岸田氏も「重く受け止めます」と受け入れるしかなかった。先手の効果なのか、二階氏への処分は見送りとの観測も出ている。

 会見は側近の林幹雄元経産相が付き添いながら行われる異例さだったが、不出馬を決めた理由に年齢があるかと聞かれると「お前もその年来るんだよ」と一喝する場面もあった。さらに、小声で「ばかやろう」と漏らす〝らしさ〟を見せた。

 二階氏の選挙区である和歌山3区は御坊市や田辺市、新宮市を含む広大な和歌山県南部だった。1975年に県会議員に当選。2期務めた後、83年に衆院選に当選。93年に宮沢内閣への不信任案に賛成して自民党を離党し、小沢一郎氏の側近と呼ばれた時期もあった。2003年に自民党に復党すると、党幹部や大臣を歴任し、安倍政権時代には幹事長を務めた。

 波瀾万丈な政治家人生だが、懸念もあった。後継者問題だ。今回の不出馬という一手も、この件に大きく影響してくる。

 永田町関係者は「次期衆院選では和歌山県の選挙区は1つ減る。すでに新2区が二階氏で決まっていたが、世耕弘成参院議員が衆院にくら替えしようと狙っているとささやかれていた」と指摘した。

 3つから2つに選挙区が減る和歌山では、新1区が鶴保庸介参院議員で決定済み。和歌山県選出の参院議員である世耕氏が狙うとしたら新2区しかない。そうなると二階氏とバッティングするのだ。

「二階氏と世耕氏の選挙区を巡る対立は、今に始まったことではない。最近の過激ダンスショーの件も〝世耕潰し〟なんて言われていた」(同)。女性ダンサーを呼んだのは世耕氏の元秘書を務めた和歌山県議だった。

 世耕氏は裏金問題について説明するため、参院政倫審に出席したが、不記載の慣習について「知らなかった」と述べるなど、世論を納得させたとは言い難い。そして、過激ダンスショーの余波もあり、党内でも厳しい立場に追い込まれている。

「二階氏が裏金問題で自ら不出馬を決めた以上、ほかの裏金議員らの処分も似たようなものにしないと、国民には受け入れられないのではないか」(別の永田町関係者)。世耕氏ら安倍派幹部への処分で検討されているのが「選挙での非公認」と「党員資格停止」だという。

 二階氏が切った不出馬というカードにより、世耕氏の非公認が実現すれば、選挙区を世耕氏に奪われることはないだろうというわけだ。もちろん世耕氏が無所属で出馬して、二階氏の後継者と争う展開もあり得るが、公認の有無は大きい。

 和歌山では戦いが続きそうだ。