失ったものは大きい――。ドジャースは20日(日本時間21日)、大谷翔平投手(29)の通訳を務めてきた水原一平氏(39)を解雇した。
複数の米メディアが同氏が違法賭博に関与した疑いがあることを水面下でつかんだ上で、この日までに報道。MLB機構は所属選手や従業員に対し、野球以外のスポーツに賭けることを許可しているが、違法なブックメーカーと取引を持つ行為は禁じており、もし関係を持った場合は厳重な処罰対象としている。
その道のプロフェッショナルとして積み上げたきたものがあっただけに、落胆の声は多い。かつてNPB球団で外国人選手の通訳を長きにわたって務めた経験のある人物は、こう語る。「通訳という立場は安泰ではない。経験値を積んだ人ほど重宝され、浅い人から切られていく。身を立てるまでは立場が弱く、苦労の多い仕事。水原さんが大谷選手に認められ、選手やチームに信頼されて、リスペクトされるような地位に上りつめるには時間がかかるし、そこまで行ける人も少ない。彼は若い同業者にとっては憧れの存在」。選手との巡り合わせといった縁や運もある。通訳者としての実力はもちろん、気遣いや周囲とのコミュニケーション能力などもろもろの素養を兼ね備えて、水原氏は地位を築いてきたはずだ。
特別な存在だっただけに、多方面で損失とも言える。昨春のWBCで世界一に輝いた侍ジャパン。栗山英樹前監督(62)が率いる代表チームの通訳を務めた。本業のみならず、通訳の枠を超えて重宝される存在だった。知将の密命を受けて、日系人プレーヤーのラーズ・ヌートバー外野手(26=カーディナルス)を招集する際、最初にコンタクトを取った人物こそ水原氏。大谷のドジャース加入後も、同球団が獲得を目指す選手のインスタグラムを水原氏がフォローする動きに敏感に反応する現地関係者も多かった。通訳の枠に収まり切れない影響力を周囲が認めるほどに、オンリーワンの存在だった。この先も、さまざまな組織、また個人としても、その存在価値を有益に使う機会は少なくなかったはずだ。
スポーツに関わる職業において通訳の価値を高め、後進に憧れを持たれる存在だった。水原氏は米メディアの取材に対し、自身がギャンブル依存に陥ったことを認めた上で「すべては自分の責任」と悔いたという。ここまで、世界最高の選手に駆け上がった大谷翔平を公私で支えきたことは間違いない。今回の顛末は実に惜しく、代償が大きかった。












