ロシア軍の新ミサイル「ツィルコン」とは――。ウクライナの犯罪科学研究所のオレクサンドル・ルビン所長は12日、ロシア軍による7日のキーウ攻撃で艦隊から発射される極超音速巡航ミサイル「ツィルコン」が使用された可能性が高いとの分析結果をSNSで発表した。

 ツィルコンは2018年にプーチン大統領が発表した6つの戦略核兵器のひとつで、最高速度マッハ9で標的まで誘導できる最先端兵器だ。従来兵器より低い空気がある高度を飛ぶので摩擦でプラズマが発生し、これによってレーダー探知を回避できる特性を持っている。そのため現在の欧米のミサイル防衛システムでは迎撃不可能とされる。

 ロシア軍はウクライナ侵攻が始まった直後の2022年3月にも戦闘機から発射する極超音速兵器「キンジャール」を使用した実績がある。

 このときはツィルコンを上回る最高速度マッハ10を誇る「無敵の高性能兵器」とうたわれたが、実際は触れ込みほどの性能を発揮せずにウクライナの防空システムがことごとく迎撃。結果、極超音速であることを疑われたばかりか英国防省にも「精度が低い」と酷評され、開発者たちは国家反逆罪に問われて逮捕されたとロシア国営メディアが報じている。

 しかし、今回のツィルコンはウクライナの防空システムをかいくぐってキーウに着弾した。ツィルコンは汎用型潜水艦にも搭載できるといわれ、世界中に展開した潜水艦から海中で気づかれずに発射することが可能だ。

 さらに着弾直前まで探知されないことで、敵に反撃の機会を与えない。そのため欧米の軍事ジャーナリストからは「世界で最も非常識な兵器」と呼ばれているという。まさに〝ゲームチェンジャー〟というべき最先端兵器なのだ。

 こうした脅威に対応すべく、日米は昨夏に対極超音速兵器迎撃システムの開発で合意したばかり。核抑止力は反撃する機会あってこそ意味があるが、今回のツィルコン実戦初使用はその前提を覆すかもしれない。