【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「彼が(会見の)ステージに上がる時に流れていた音楽が気になった。ビリー・ホリデーの『ラヴァー・マン』。どんなムードを演出しようとしているんだ? キャンドルやコニャックが必要じゃないか?と思ったよ」
このように独特でウイットに富んだコメントを口にしたのは、12月からドジャース専門サイト「ドジャーネイション」に転職したばかりのJ.P.ホーンストラ記者(以下J.P.)だ。
14日(現地時間)に行われた大谷翔平投手(29)のドジャース入団会見の現場で10人ぐらいに感想を聞いて回ったが、音楽のことを口にしたのはJ.P.だけだった。
そんな独自の視点を強みに活躍する彼が、あの“大谷トロント騒動”を巻き起こす張本人となってしまった。大谷本人によるドジャース入団発表の前日13日に「MLBネットワーク」のジョン・モロシ記者とともに、J.P.が「ブルージェイズと契約することになりそうだ」などと発信した速報によって大谷がブルージェイズと契約すると確信した人が続出。実は全然関係のない実業家が搭乗していたアナハイム発トロント行きのチャーター便に世界中の目が注がれるという珍現象が発生した挙げ句、他のビートライターから「大谷は家にいる」と突っ込まれ、数日後には謝罪動画を出すハメになった。
終わってみればドジャース・大谷の誕生で「世紀の契約らしい見事なエンタメ性だったね」などとなじみの記者らとのんきに語り合っていたが、J.P.だけは「僕らのような速報を扱っている人間にとって間違いはあるものと覚悟しているんだけどね」とつぶやくなど元気がなかった。
励ますつもりで「大谷の取材を続けられるから、ある意味良かったのでは?」と言ってみると一瞬考えた後に「いやいや…」と否定し、こう続けた。
「オオタニの取材がいかに意義のあるものだとしても、やはり情報が合っていてほしかったかな。自分の名前を載せているからね。今回のプロセスは間違っていないと思うけど情報源はわずか2人。ここまで大きな話題だっただけに、その反響はつらかった。正解を伝えたいと思うから、あの時は本当にトロントへ行くと信じて書いたんだ」と言った後、こうも続けた。
「野球以外も全て伝えなければならないのがこの仕事の最も楽しくないところ。オオタニにはインタビューできる機会が少なく、いつも期間が空いているため大勢のメディアが押しかける。最近じゃ、まるでサーカス。欲しいと思うコメントには時間が足りない。楽しいのは、彼の野球を眺めていられる時。彼がトロントに行っていたら自分は向こう10年間、史上最高の選手の野球を見逃すところだったけど確かにそれはなくなった。これからも取材を続け、子供たちが大きくなったら『お父さんはオオタニの取材をしているんだよ』と自慢できるかもしれない」
まだ終わってはいないが、今オフのMLBストーブリーグは、まさに「サーカス」のようだ。「大谷サーカス御一行さま」が街にやってきて「準備中」の看板が出ているのにしびれを切らした報道陣やファンらが次々に“公演”を開始。サーカスがパレードに変わりそうなところで花火を打ち上げて終了したかのような、お祭り騒ぎだった。
大谷本人は、そんな“オオタニ狂騒曲”の様子をどう見ていたのだろうか――。少し早いですが、皆さま、良いお年を!











