飲み過ぎの人に多いアルコール性肝障害。アルコール性肝障害というと治療が難しいイメージがあるが、昨今はいい治療法が開発され、効果を上げているという。

 中でも注目したいのが「糞便移植」である。文字だけを見ると、「糞便をそのまま移植するの!?」と思うかもしれないが(私はそう思った)、そうではない。20歳以上の健康なドナーから糞便を採取し、攪拌(かくはん)ろ過した腸液を肝障害の患者に投与する治療法だ。これによって好バランスな腸内細菌叢(さいきんそう=腸内フローラ)となり、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、果てはうつなどの改善に効果が発揮されている。

 実は腸内環境と肝臓の関係は密接。腸内細菌に悪玉菌が多いと、肝臓を介して毒性のある胆汁酸が全身を巡ってしまうという。その結果、糖尿病、高脂血症、高血圧といった生活習慣病を引き起こすと言われている。こうしたことを考えると、「腸内環境を良くしておけば、肝臓の健康を維持できる」と考えても良さそうだ。実際、医学界では腸と肝臓が一体としてバリア機能を持つ「腸肝軸」という概念で、研究が進んでいる。

 とはいえ、現段階において糞便移植は研究途上にあるため、「糞便移植をしたら肝障害が抑制される」とは言い切れない。しかし、糞便移植をした1年後の結果は良好という報告があることから、期待と希望は持てる。できることなら肝障害とは無縁でいたいけど、糞便移植の効果が確立され保険適用になった折には治療法の1つとして選択してもいいのではないだろうか。

 と、ここまで書いて、ふと考えた。実際、糞便移植となったら、誰をドナーにしたらいいのだろう? トイレにこもっている時間が異常に長い夫は絶対イヤだし……、と思ってネット検索をしてみたら、何と今は糞便微生物叢移植のためのドナーバンクも存在していることがわかった。ドナーは皆、厳しい検査基準をパスした方々だという。これを知って安心。万が一の場合は、ドナーバンクに連絡すればいいからだ。いや、そんなことを真剣に考える前に、アルコール性肝障害にならぬよう、飲み過ぎない工夫をするほうが先だよね。

 ※参考資料「アル健協 NEWS&REPORTS 2023.11」