大手スーパーとは何が違うのか? 地方発スーパーが首都圏で存在感を強めている。ディスカウント型から生鮮重視型まで業態は多様だが、共通するのは「わざわざ行きたくなる店づくり」だ。関東初進出となるバロー横浜下永谷店を流通ウォッチャーの渡辺広明氏(58)と現地取材すると、特売や利便性重視とは一線を画す売り場が見えてきた。

 地方発のローカルスーパーが首都圏への出店を強めている。九州を中心に大小4形態で352店舗(6月末時点)を構える「トライアルホールディングス」(福岡県福岡市)は先月7日、小型ディスカウント店「トライアルGO」を西荻窪駅と富士見台駅に出店。

 岐阜や愛知を中心に364店舗(11月末時点)のスーパーマーケットを運営する「バローホールディングス」(岐阜県恵那市)は先月21日、関東初進出を果たした。

 少し前には関東から地方へ進出する「ロピア」(神奈川県川崎市)や「オーケー」(神奈川県横浜市)も話題となっており“スーパー戦国時代”が始まっていると言っても過言ではない。

 開店から約1か月が過ぎた「バロー横浜下永谷店」を渡辺氏と現地取材した。環状2号線沿いでかつてはヤマダ電機だった建物に居抜き出店したバロー。平日にもかかわらず立体駐車場を目指して左折する車が多く、できるだけ渋滞を起こさぬよう交通整理員を5人以上配置していた(※混雑のため、店内写真撮影の許可も下りず…)。

 まず目を引くのが店頭に箱のまま積み上げられた野菜とフルーツ。超目玉の大根は1本98円、キャベツは1玉98円で客が群がり、さらに横には箱売りのフルーツ。タイムバーゲンの三ヶ日みかんはなんと1箱1500円であちこちから「安いね」「こんなに食べられるかな」という声が聞こえてくる。

「入店してすぐのところにフルーツを使った色鮮やかなスイーツ売り場を設けているのが絶妙だと思いますね。家族構成によっては箱のフルーツって量が多いじゃないですか? 箱では買えないけど、生フルーツコッペや生フルーツプリン(どちらも1080円)なら買える。それでおいしかったら今度は箱で買ってみようかというきっかけにもなるし、まず果物を買い物カゴに入れさせる仕組みが強い」(渡辺氏)

見た目鮮やかなフルーツプリンとフルーツコッペ
見た目鮮やかなフルーツプリンとフルーツコッペ

 果物に続いて野菜、魚、精肉売り場が店内の外周に設置されていて、どこにも人だかりができている。

 魚市場さながらの鮮魚コーナーは圧巻。小田原港直送のカワハギやヒゲダイ、ニザダイなど1尾ずつ買えて、三枚おろしや柵など無料で調理してもらえる。愛知産の平貝や沖縄産のヒメシャコ貝など普通のスーパーではお目にかかれない活貝水槽には子供も目を奪われていて、「動いたよ、パパ!」と水族館的に楽しむ親子もあった。ここでも料理をしない人向けの“導線”がある。バロー自慢の「本鮪握り寿司」(8貫1280円)が飛ぶように売れていたのだ。記者も自腹で購入し実食したが、確かにマグロはうまかった(シャリ玉はロボットで作られたものでごく普通)。次回はマグロを柵で購入するだろう。他にも魚屋の海鮮天丼など、調理しない人を引きつける中食が店内各所にある。

「バロー自慢」「満腹保証」とアピールされていた本マグロ握りずし
「バロー自慢」「満腹保証」とアピールされていた本マグロ握りずし

 精肉の横には飛騨牛コロッケをスタッフ対面販売。1か月で10万個売れたというので単純計算で1日平均3333個売り上げている計算だ。その横のおでん売り場はほぼ100円。「どれにしましょう?」と店員が注文を聞いて持ち帰り容器にサーブしてくれる。そしてレジ横のパン売り場では店内で焼いたパンを1個98円で発売。100~200円の商品もあるが、全商品の30%が98円でお得感が半端ない。

 渡辺氏が解説する。
「最近ではどのスーパーもインストアベーカリーを導入してますし、最近では店内で焼いたピザ(500円前後)などは珍しいものではなくなりました。その意味でバローのパン売り場にはシンプルに98円という価格の強さがありましたね。とはいえ、98円均一にしないところにも“らしさ”がある。バローは全店舗でEDLP(EveryDayLowPrice)戦略を採用しているわけではなく、店舗ごとの立地や競合の状況によって使い分けている。この関東1号店は折り込みチラシで集客しなくても来たくなるような仕掛けを用意。店内に掲出された『食べて美味しい 価値ある食材をバローから食卓へ』というメッセージが理解できる店づくりでした」

東海地方出身のスーパーらしく飛騨牛コロッケと名古屋メシも販売していた
東海地方出身のスーパーらしく飛騨牛コロッケと名古屋メシも販売していた

 最近では共働き世帯や単身世帯が増え、調理の手間や時間を減らしたい需要が高まっているため、冷凍食品やミールキットを充実させるスーパーが多い。もちろん、バローにもそうした商品はあるのだが、客の視線は圧倒的に生鮮3品に注がれていて、冷食売り場が閑散とするほど。バローはある意味では首都圏スーパーの逆張りで存在感を発揮していくのかもしれない。

☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。フジテレビ「Live News α」コメンテーター。Tokyofm「ビジトピ」パーソナリティー。