崩壊を食い止めることはできるのか。日本水泳連盟(日水連)は6日に都内で常務理事会を開き、7月の世界選手権(福岡)で競泳日本代表コーチを務めた平井伯昌氏(60)にけん責処分を科した。日水連の強化事業に関しても、9月1日から来年2月末の半年間にわたって参加自粛を勧告。平井氏がリーダーを務めた来夏のパリ五輪プロジェクトチームも、「一定の役割を終えた」として8月末で解団となった。だが、これで一件落着とは言い難い。本紙の取材で浮き彫りになった双方の問題点とは――。

 競泳の内紛劇は、銅メダル2個と惨敗に終わった世界選手権が大きな引き金となった。平井氏は強化方針に不満を示し、閉幕前にチームを離脱。全日程終了後のミーティングも欠席したため、日水連側は「職務放棄」と見なした。さらにSNSや一部メディアの取材に、大会時のリレーの選手起用を巡る経緯など、さまざまな内部事情を暴露。それらが違反行為と判断された。

 金子日出澄専務理事は今回の処分について「プライバシーへの配慮、責任行動義務に違反した」と説明。情報管理の重要性を強調した。ただ、ある日水連関係者は連盟の〝隠蔽体質〟が事態のドロ沼化を招いたと分析する。「日水連が外に自ら情報を発信することは、ほとんどない。そういう体質ですからね。なので、上が何をしているのかよくわからないことが多い」。今は誰もが容易に情報や意見を発信できる時代。日水連側がダンマリを決め込む間に平井氏が自身の胸の内を明かしたことで、収拾がつかなくなったというわけだ。

 先の見えない内紛に、他競技の連盟関係者も「日水連は大丈夫なのか?」と真顔で心配するほど。連盟の強化関係者は「やっぱり閉鎖的だと所属先の選手を露骨に推す人がいたりしていろいろ大変だった。でも(議論を)公開制にしたことで、むちゃな意見は減った」と古い体質の弊害を指摘する。〝プライバシー〟を盾に閉鎖的な話し合いを進めるのは、もはやナンセンスだ。

 日水連が組織としての問題点を露呈する一方で、平井氏の指導も曲がり角を迎えていた。男子平泳ぎ五輪2大会連続2冠の北島康介氏、リオデジャネイロ五輪男子400メートル個人メドレー金メダルの萩野公介氏をはじめ、数多くの五輪メダリストを育成。「先輩たちに続け」と多くの若きスイマーが平井氏が水泳部の監督を務める東洋大に進学したが、近年はほころびが生じ始めているのだ。

 ある日本代表OBは「当然、平井先生の指導に合わない選手がいるのは仕方ない」としながらも「最近は平井先生の指導に我慢しきれず、出ていった選手もいましたよ」と明かす。日本競泳界の黄金期を築いた名将と言えども、その指導が時代の変化に合わなくなっていた側面は否めない。

 立て直しが急務となるパリ五輪までは、残り1年を切った。ただでさえ苦しい状況だからこそ、内輪もめをしている暇などない。一刻も早く事態を収束させない限り、日本競泳陣の躍進は夢物語となってしまうだろう。