元祖アイドルレスラーとして一世を風靡し、現在もその美貌でファンを魅了するのが女子プロレス「LLPW―X」の井上貴子(53)だ。今月19日には業界盟主「スターダム」の大田区大会に初参戦。ワールド王者・中野たむとの新旧アイドルレスラー対決で貫禄を見せつけ話題を呼んだ。11月21日には、東京ドームシティホールでデビュー35周年記念大会を開催する。節目を迎えた貴子が、元祖アイドルレスラーならではの苦悩や今後のプロレス人生を明かす――。

リング上で歌を披露したことも(91年11月、川崎)
リング上で歌を披露したことも(91年11月、川崎)

 ――35周年イヤーを迎えて

 貴子 18歳で全女(全日本女子プロレス)に入って、2日目とかにはもう辞めようって思ってたんだけどね。その後も20歳になったら辞めようって思ってはいたけど、そのころからプロレスが面白くなってきて続けて。そのうちにアイドルレスラーとして売り出されることになって、大の大人が私なんかのために一生懸命働いてくれた。その姿を見て、私が有名にならないといろんな人が無駄な汗をかくと思って、「辞められない。頑張ろう」と思いました。人間関係で嫌な時もあったけど、仕事が楽しかった。

堀田(左)とのコンビでJWPとの対抗戦に出場(92年12月、大田区)
堀田(左)とのコンビでJWPとの対抗戦に出場(92年12月、大田区)

 ――ターニングポイントは

 貴子 堀田(祐美子)選手とJWP女子プロレスとの対抗戦に出た時。当時、同期の井上京子選手がいつもメインに出ていて、吉田万里子がメキシコから帰ってきて自分の道を見つけた。でも、私はアイドルレスラーとして終わりかけてたから、これ以上無理だなって思って会社に「本当に辞めます」って言ったら「対抗戦があるから出て」って言われて。試合に行ったらめっちゃ楽しくて、帰ってきてすぐ「辞めるのやめます」って。そこから自分のためにプロレスをやるっていう意識に変わって。それで気がついたら35年たってた。

 ――アイドルレスラーとして一つの時代を築いた

 貴子 当時はほとんど毎日試合があって。テレビとかの仕事してから試合会場に行って、試合が終わって寮に帰ってきてからも取材があったり。会場を間違えて、試合に間に合わなかったこともあったね。会場着いたらリングの片付けしてて、選手一人ひとりに謝りにいったりもしました。

 ――周りの反応は

 貴子 アイドルレスラーとして活動し始めたばかりの時は先輩から「練習も下積みの仕事もやらないってどういうこと?」みたいな感じで言われたり、無視とかはしょっちゅう。まあ、そのおかげで「アイツより試合でも魅せて、売店でも列つくってやる」って思って何も言わせないようにしていた。夜中の道場にはお化けが出るとか言われてたから「怖いな」って思いながらも、1人で音楽ガンガンかけて練習してましたね。

 ――先日はスターダムに参戦した

 貴子 もともとはエンターテインメント型のプロレスって感じだと思ってた。踊りながら入場したりするのは私の中でプロレスではなかったから。まあ、中野たむは知ってるよ。あんまり覚えてないけど、たむが「アイドルレスラー辞めます」って言ってて、その時に私が「アイドルレスラーって1回言われたら、一生言われる。だから、やり続けた方がいい」って言っただけ。私がもし悪いことして捕まったりしても「元祖アイドルレスラーの井上貴子が」って言われる。これは一生つきまとうものだから、一度名乗ったなら受け入れて、心してやりなさいって。だからこれからも貫いてほしい。

初のスターダムマットでは中野(左)と激しい攻防を展開
初のスターダムマットでは中野(左)と激しい攻防を展開

 ――対戦した印象は

 貴子 全然思ってた感じではなくて、ちゃんとプロレスできるんだなって。それに私たちのこと、よく研究したんだろうなと思いましたね。やっぱガンガン来てもらうほうがうれしいからね。若い子たちが頑張っているので、その気持ちは買いたい。また機会があれば戦いたいですね。

 ――今後について

 貴子 健康第一。40周年まで? やるつもりはない。それに今、道場に練習生が何人か来ていて、若手を育てるのが楽しい。世界に羽ばたくような選手を育てますよ。引退? 来年、神取(忍)さんの還暦の大会があるはずだから、そこまでは頑張ろうと思っている。その後は蝶野(正洋)さんとか川田(利明)さんみたいに引退試合とかせず、一生プロレスラーっていう肩書のままでいようかな。

貴子は節目を迎えた胸中を激白した
貴子は節目を迎えた胸中を激白した

 ☆いのうえ・たかこ 1969年11月7日生まれ。茨城・取手市出身。88年10月10日の全日本女子プロレス後楽園大会で井上京子を相手にデビューし、写真集やCDを発売するなどアイドルレスラーとして活躍。99年に退団しフリーに転向したが、2005年に神取忍率いるLLPW(後にLLPW―X)に入団。トレードマークのスタンガンを振り回しながらリングを席巻する。163センチ。