尊敬する父が成長を認めてくれた理由を、仲間は知っている。第105回全国高校野球選手権大会(甲子園)で、慶応(神奈川)の107年ぶりの優勝メンバーとなった清原勝児内野手(2年)。23日の決勝では9回に代打で出場し、四球を選んだ。夏制覇に「(レギュラーだった)春とは違った貢献だったんですけど、それも一つの貢献の仕方。自分の成長につながったと思います」と胸を張った。
出会った仲間たちとかけがえのない時間を過ごしてきた。中でも清原には唯一無二の盟友がいた。大会前に出場全選手を対象としたアンケート。「あなたのイチオシ選手を教えてください(理由も)」との項目に、清原は力強い字で宮尾青波内野手(3年)の名前を記し「好きに理由はない」と書き込んだ。
決勝戦の後、その字をまじまじと見入った宮尾は「言葉を伝えなくても分かりあえる存在です。僕にとって、勝児は人としてあこがれというか、将来ああいう人間になりたいと思わせてくれた人です」と言って、優しくほほ笑んだ。1年生の練習初日に清原に声をかけられて以来「気がつけば、いつも一緒にいる」という仲になった。
「勝児を嫌いな人や悪く言う人はいないはずです。後輩や仲間から慕われ、あこがれを抱かれるような人。その理由は、誰に対しても分け隔てなく接するところ。頭では分かっていても、人がなかなかできないことを勝児はできるから」。どんな時も周りを気遣い、先回りできる人間だった。
「僕が絶対、マネできないなと思ったことがあります」と言って、宮尾が明かす清原の真骨頂とも言えるエピソードがある。「留年が決まった時にケロっとして現れたんです。正直、相当ショックだったはずです。でも、周りを心配させたり、変な気遣いをさせないために、そこまで考えて行動できる人間なんです。笑顔をつくって、笑いやネタに変えて…。自分が落ち込んで、周りがどういう雰囲気になるか。周りに気を使わせない。分かっていても普通はできない。表情や態度に出てしまって、隠せないと思うんです。僕には絶対できないです」。1年時に留年している清原はこの日、3年生とともに高校野球生活に一つの区切りをつけた。
甲子園、プロ野球で偉大な実績を残した清原和博氏(56)の次男として、隠れることのできない日々を過ごしてきた。そんな中で清原は「注目されることは特別なこと。打たなくても常に取材を求められるのは〝宿命〟です」とも言った。途中出場、凡打で沸いた聖地――。野球人として〝情け〟をかけられる悔しさを味わってもグッとこらえて、最後の夏を戦い抜いた。
決勝戦を観戦した父・和博氏は、息子へのコメントを求められてこう答えた。「勝児は優勝の喜びも、またスタメンで出られなかった悔しさもあるでしょう。まだ野球人生は終わっていないし、しばらくゆっくりと高校生らしい生活を送った後、どこかで線を引いて、次の目標に向かってほしい。私の息子であり注目され、試合に出なくても取材を毎回受けるなど苦しさもあったと思います。しかし、きちんと対応して立派に育ってくれたなと感じました。褒めてあげたいです」。
最後に宮尾は10メートル先で報道陣に囲まれ、丁寧に取材対応する清原に視線を送りながら、こう言って笑った。「かっこいいですよね。中身も」。












