第105回全国高校野球選手権大会第10日は16日に甲子園で行われ、第2試合は慶応(神奈川)が広陵(広島)を延長10回タイブレークの末、6―3で下して15年ぶりの8強入りを決めた。

 慶応にとっては序盤に3点をリードしながら、追いつかれる嫌な展開。それでもベンチに〝負のオーラ〟は一切なかった。それどころか信条の「エンジョイ・ベースボール」を体現する笑顔であふれ、活気に満ちた声がグラウンド中に響いた。

 試合終盤のベンチの雰囲気を「広陵さんはとても強くて、このままずっといくわけはないと全員が思っていた。追いつかれても、そこからもう一回盛り返せる気持ちがあったし、そこはチャレンジャーって言葉を意識してやっていた」と明かしたのは清原勝児(2年)だった。

 さらに清原は「せっかくいい場所で野球をやらせてもらっているのに、ネガティブ思考で笑顔がなく、ムッとした顔で野球をしても楽しくない。そうやって顔を上げて胸を張ってやっていれば、いずれいい結果が出ると思ってやっている。それが今は結果につながっているんだと思います」とチームの意図を代弁し、躍進の背景を語った。

 慶応ナインには「勝者に選ばれる言動」を再確認する試合があった。それは微妙な判定を巡って注目を集めた神奈川大会決勝の横浜戦。2点を追う9回無死一塁の攻撃、二ゴロで送球を受けた相手遊撃手が二塁ベースを踏んでいないと判定(記録は遊撃手の失策)された後に逆転3ランが飛び出した試合だった。

 その2日後に開かれた部員全員参加の全体ミーティングで、ナインは「野球の神様はいる。神様に選ばれる理由はあるし、それを忘れてはいけない」「劣勢で下を向かない姿勢と行動が最後まであった。それが運を引き寄せた」と総括。勝ち運を呼び込む思考と言動の因果関係を再認識する成功体験が、逆境でも「何かが起こせる」という暗示につながり、一方で相手に対しては不気味さや重圧を与える好循環を生み出している。

 この日も3―3で迎えた土壇場の9回に、相手主砲の真鍋(3年)が無死一塁で犠打を試みて失敗。これが分岐点となり、慶応は流れを引き戻した。10回に2点適時打を放つなど5打点と活躍した延末(3年)は試合後こう言った。「神奈川の代表として来ている。倒した高校だったり、神奈川の高校の思いもしっかり背負っている」。教訓を忘れず、横浜の分まで――。今年の慶応は、徳俵に足がかかってからが異常に強い。