まわしの秘密とは? 7月の名古屋場所では、横綱照ノ富士(伊勢ヶ浜)が幕内翔猿(追手風)の伸びきった一枚まわしに苦戦して金星を配給。大関霧島(陸奥)は「まわし待った」から再開までに長時間を要して話題となった。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(39)による連載「がぶりトーク」では、力士が唯一身にまとう〝戦闘服〟をクローズアップ。その知られざる真実に迫った。

【秀ノ山親方・がぶりトーク】読者のみなさん、こんにちは! 今回のテーマは「まわし」です。力士が稽古場で使うのが「稽古まわし」で、若い衆は黒まわし、関取衆は白まわしを締める。基本的には洗わず、天日干しで乾かして繰り返し使います。黒まわしは汗の塩が白く噴き出るので、まわしを見ただけで稽古量が分かる。その力士の血も汗も涙もしみ込んでいるんですね。

 自分が黒まわしのころは、テーピングで自分の名字(菊次)の「キ」の字を入れていた。外した時に誰のものかを判別するためです。それが関取になると、白まわしの端の部分に行司さんがしこ名を書いてくれるんですよ。そのしこ名を見た時は「うわーっ、関取になったんだ!」と感激しましたね。稽古中にまわしの端がほどけてしこ名が見えたりすると、うれしかったな(笑い)。

 関取が本場所で使うまわしが「締め込み」です。新十両に上がった時に、後援会に自分が好きな青色のものをつくっていただきました。それを15年間近く使っていた。そこまで長く使う力士は、なかなかいないと思います。もちろん、擦れたり破れたりしてくるので、あて布をして継ぎはぎをしながら長持ちさせていた。

 新十両のころは130キロ前後だった体重が幕内に上がって160、170キロとかになってくると、長さが足りなくなる。その時は他の締め込みを切って継ぎ足したりしていた。現役の最後のころには本当にボロボロになってしまったので、さすがに新調しました。ずっと一緒に戦ってきて愛着があるものだから「よく頑張ってくれた」と思いましたね。

 締め込みの巻き方は、人それぞれ。自分の場合は体に食い込むぐらいに目いっぱいきつく締め上げて、対戦相手の指1本、爪1枚も入らないようにしていた。自分と一心同体、体の一部という感覚。それだけ固くしていたので、日馬富士関に一度「まわしを取りにいったら爪が割れた」と〝物言い〟をつけられたこともありました(苦笑い)。ただ、きつく締めると腰が下りなくなって相撲が取れない力士もいる。そういう人は緩く締めることが多いようです。

 まわしをしっかり締めて最後に結び目に入れるのは、かなりの力仕事。付け人が2、3人がかりでやるのが普通です。先場所は霧島と翠富士の結びの相撲で「まわし待った」がありましたよね。行司さんが一人で締め直すのは至難の業。すぐに再開できなかったのは、仕方のないことだと思います。

 締め込みの色は力士の個性にもなっている。自分はずっと青色を愛用していたし、白鵬関は茶色、稀勢の里関は部屋伝統のエンジ色を長く使っていましたよね。今の力士なら宇良はピンク、輝は金色とか。余談ですが、自分の6歳の長男はまわしの色で力士を見分けている。「赤色は?」と聞くと「大栄翔!」とか答えますから(笑い)。

 ファンの方たちも、本場所では力士の締め込みの色に注目しながら観戦すると面白いかもしれませんね。それではまた!

(元大関琴奨菊)