ちょんまげの〝秘密〟とは? 大相撲の鶴竜親方(元横綱)、春日山親方(元関脇勢)が今月上旬に東京・両国国技館で断髪式を行った。現役を引退した力士にとっては、土俵人生に区切りをつける一大イベント。断髪式の前後で、元力士の生活は劇的に変化するという。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(39=本紙評論家)による連載「がぶりトーク」では、力士の象徴について徹底解説した。
【秀ノ山親方・がぶりトーク】読者のみなさん、こんにちは! 今回のテーマは力士の象徴「ちょんまげ」です。先日の鶴竜関や勢関の断髪式では、私もハサミを入れさせていただきました。自分のときもそうでしたが、力士は現役を辞めても、まげがあるうちは心の中に「お相撲さん」の意識がある。断髪式を終えて、本当の意味で引退した気持ちになるんですね。
自分も断髪式まで約20年間、まげと一緒に過ごしてきているから特別な思い入れがありました。入門して1年半とか2年ぐらいでちょんまげが結えるようになって、初めて一人前の力士として認められる。関取になって、床山さんに大銀杏を結ってもらっている時は自然と気持ちが引き締まりました。力士にとって、まげは「魂」のようなものなんです。
だから、現役時代は「力士たる者、ちょんまげは常にしっかりしておく」という思いがあって、むちゃくちゃ気を使っていた。特に寝る時には注意が必要です。普通の枕だと、まげの後ろの部分が直接枕に当たって緩んだり崩れたりしてしまうんですよ。あいさつ回りなどで遠方に出掛けるときは、専用の円筒状の枕を持参していました。
その枕を首の下に置いて寝れば、まげが枕に触れないので崩れない。枕が使えないときには、うつ伏せになって寝たりしていました。なので、まげを切り落とした時には身近なものがなくなってしまう寂しさがあると同時に、そういった気苦労がなくなるうれしさもありましたね。
ところで、断髪を終えたばかりの人たちは、みんな髪形が似ていると思いませんか? 実は、これにも理由があるんです。まげを結っている力士は髪の毛が常に引っ張られている状態なので、毛穴が上を向いて「逆毛」のような状態になっているんですね。そのまま伸ばしたら、髪形がおかしくなってしまうことがある。だからオールバックとか、横を刈り上げたりとか、どうしても同じようなカットになるんです。その毛穴のクセは半年もたてば元に戻るので、そこから好きな髪形にすることができる。
それから、最初に戸惑ったのがお店での散髪です。自分の場合は中学校から相撲部の部員同士でバリカンで丸刈りにしていたので、お店で散髪したのが小学校以来だったんですよ。お店の人に「お任せします」と伝えて寝ていたら、自分ではトレードマークだと思っていた太いまゆ毛をそられて、細くされてしまった。鏡を見た瞬間、嫁に電話して「やばい、まゆ毛がなくなっちゃった」と伝えました(笑い)。
いずれにしても、ちょんまげを切ると「一般人に戻ったんだな」と強く実感します。現役時代は、まげがあるだけで声をかけていただくことが多かった。断髪してすぐに野球観戦に行ったら誰一人、声をかけられませんでしたから(苦笑い)。ですから、後輩の力士たちには「まげがあるからこそのお相撲さん。だから、ちゃんとお相撲さんらしくするんだよ」と伝えてあげたいですね。それではまた!












