小よく大を制す――。大相撲では平成以降に力士の大型化が進む一方で、「平成の牛若丸」「技のデパート」の異名を取った舞の海や、「F1相撲」と称された琴錦など個性的な小兵力士たちが活躍。3月の春場所では、幕内最小兵の翠富士(伊勢ヶ浜)が堂々の優勝争いで土俵を沸かせた。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(39=本紙評論家)による連載「がぶりトーク」では小兵力士に焦点を当て、その魅力に迫った。

【秀ノ山親方・がぶりトーク】読者のみなさん、こんにちは! 今回のテーマは「小兵力士」です。大相撲の魅力の一つは体重制限がないこと。小よく大を制するところに面白さがある。自分が子供のころは舞の海関、琴錦関、智ノ花関、現役時代には豊ノ島といった個性的な小兵力士がいました。3月の春場所では、幕内で最小兵の翠富士が中盤まで優勝争いを引っ張って盛り上げましたよね。

 なぜ小さい力士は、はるかに大きい相手を倒すことができるのか。別の言い方をすると、大きい力士は見た目の体格差ほど有利じゃないということは言えると思います。自分の経験上、小兵力士は的が小さいぶん、当たりづらいんですよ。それに相手がいろんなことをしてくるので、考えることが増える。だからといって慎重に見ていくと、相手に一瞬の隙を突かれることもあります。

 豊ノ島には、こちらがもろ差しを警戒すればするほど、うまく中に入られた記憶がある。炎鵬とやった時には、的が小さすぎて自分の体重が相手に乗り切らない感覚がありました。それで前まわしを取られて、引っかき回されたり…。そういった小兵力士に共通している特長は、負けん気の強さ。そして、相撲の基礎がしっかりとできていることです。

 押すこと一つを取ってみても、大きい力士は体格だけで押せてしまうところがある。でも、小さい力士は脇をしめる、腰を落とすといった基本に忠実じゃないと、大きい相手を押し切れないんですよ。春場所で活躍した翠富士にしても、しっかり押す力があって中に入れるからこそ、肩すかしが決まるんですね。

 小兵力士の多くは勝つためには何が必要かを常に考えていて、人一倍の努力をしている。大きい力士をスピードで上回るためには瞬発力が必要だし、相手の圧力を逃がす体の使い方も覚えないといけない。大型力士と勝負しても壊れない体づくりやケアも大事になってくる。そうした努力を続けていく中で、自分に合った相撲を見つけて、それぞれの個性が磨かれていくのだと思います。

 余談ですが、あの白鵬関も入門した時の体重は62キロ。〝小兵〟の時期に必死に努力して、しっかりとした土台をつくっていたからこそ、体が大きくなってからあれだけの強さを発揮したのではないでしょうか。逆に、最初から大型力士として入門してきた人の中には、恵まれた体を持て余しているなと感じることもあります。

 いずれにしても、見ている側も大味な相撲ばかりでは面白くありません。小兵力士が見せてくれるスパイスの効いた相撲も土俵には欠かせない。来場所以降も見る者をワクワクさせてもらいたいですね。「平成の牛若丸」と呼ばれた舞の海関のように、今の時代にも「令和の○○」と言われるような力士が出てくれば一層、大相撲が盛り上がるはずです。それではまた! 

(元大関琴奨菊)