【取材の裏側 現場ノート】3月に行われた大相撲春場所(大阪府立体育会館)は4年ぶりの通常開催となった。コロナ禍で実施されていた観客数制限が撤廃され、15日間で満員御礼。声出し応援も解禁され、現地で取材した記者も館内の熱気を肌で感じることができた。土俵では横綱大関が不在の中、関脇霧馬山(26=陸奥)が初優勝。地元関西出身の幕内宇良(30=木瀬)も連日、観客を沸かせた。

 一方で、期待値を下回ったのは関脇豊昇龍(23=立浪)だ。象徴的だったのは6日目の阿武咲戦。立ち合いの変化からはたき込むあっけない勝負に、熱戦を期待した観客からは大きなため息が漏れた。豊昇龍は「狙ったわけじゃない。体が勝手に動いただけ」と〝釈明〟したが、失望したのはファンだけではない。

 粂川審判長(元小結琴稲妻)は「もっと力の差を見せてほしかった。力があるだけに、もったいない」。日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)も「上を目指すなら、苦労して勝つことを目指してほしい。相撲はお客さんに見せるものだから。若手だけにね…」と苦言を呈した。15日間を通しても「変化気味の楽をして勝とうとする相撲が多かった。自信のなさの表れ」と厳しい評価を下している。

 春場所では優勝した霧馬山ら三役陣が奮闘し、新たな看板力士の誕生を予感させた。豊昇龍も結果だけを見れば、大関取りの起点となる10勝5敗。しかし、相撲内容が印象をかすませている。元横綱朝青龍を叔父に持つサラブレッド。スター性を感じさせる力士だけに、そろそろひと皮むけた姿が見てみたい。

(大相撲担当・小原太郎)