【多事蹴論(70)】キング・カズが明かした移籍で失敗しない“秘訣”とは――。元日本代表FW三浦知良(56=オリベイレンセ)は、1998年シーズンでV川崎(現東京V)を退団すると、クロアチア1部クロアチア・ザグレブ(現ディナモ・ザグレブ)へ2年契約で移籍。99年2月のデビュー戦ではPKに失敗するも、アシストをマークする活躍を見せ、高評価を受けた。

 その後、カズはしばらく苦戦するも、チームは同シーズンにリーグ制覇を達成。次シーズンの欧州チャンピオンズリーグ出場への期待も高まっていた。しかしJリーグ清水を指揮していたアルゼンチン人のオズワルド・アルディレス監督が招聘されると状況は一変。新指揮官から「お前を起用するつもりはない」と通告され、99年6月に契約期間半ばながら退団を余儀なくされた。

 カズは同年8月にJ1京都に加入。2001年に神戸へ移籍した当時、国内外のクラブを渡り歩いてきたカズは本紙にこう明かした。「例えばだけど、どこかのクラブからオファーが来たとして条件とか契約期間とかいろいろあるけど、オレを『欲しい』と言ったのは誰だったのか。それは監督なのか、それともフロントの誰かなのか。移籍をするにしても、そこは本当に重要なことなんだよ」と力説した。

「監督が戦力として『オレ(カズ)を獲ってくれ』とフロントにお願いしてオファーが来た場合、普段通りにやれれば、試合にも使ってもらえる。でも途中で監督が代わったりすれば、その先にどうなるかはわからない。逆にフロントの主導で移籍した場合、チームに合流したら監督が『お前は使わない』ってことだってある。だけど簡単にはクビにならないとかね…」

 選手獲得の際、フロントらがチームのビジョンや補強ポイントを協議して主導する場合や監督が求めるタイプの選手や個人を指名するなどがある。もちろん、双方が納得した上で補強するのが一般的だが、外部からの売り込みを含め、さまざまなケースがあり、トラブルに発展することも珍しくない。それだけに現場責任者となる監督の強い意向であれば、構想外にはなりにくいわけだ。

 カズは「オレはやっぱり監督から『欲しい』と言われた方がいいかな。絶対ってわけではないけどね」と語っていた。実際、フロント陣が主導し、94年に移籍したイタリア1部ジェノアでは出場機会に恵まれず、ベンチ暮らしが多かった。06年に加入したオーストラリア1部シドニーFCはピエール・リトバルスキー監督からのラブコールにより移籍が実現。短期間の契約ながら主力としてプレーした。

 百戦錬磨のカズも苦戦しているように、海外移籍には大きなリスクも伴うケースもある。Jリーグでも同じような問題は起きており、移籍をキッカケに低迷する選手は少なくない。 (敬称略)