【ニューヨーク24日(日本時間25日)】MLBがエンゼルスの大谷翔平投手(28)を対象に新たな「大谷ルール」を検討することが分かった。きっかけは大谷が「2番・投手兼DH」で出場した17日(同18日)のレッドソックス戦で出塁した際に、防寒用の上着を「ピッチクロック」の制限時間を気にするあまり着用を断念したシーンだ。「大谷にもできないことがあった」とSNSを通じて日米で大きな話題となり波紋を広げた。MLBが「投手が塁上で上着を着用する際にタイムを取得できる」ルールを明確化すべく、動き出すことになった。

 MLBが問題視するシーンは17日のレッドソックス戦の2回に起こった。無死一塁で右前打を放った大谷は気温10度と寒かったため、防寒用の上着を羽織ろうとしたがファスナーが初回に着用した際に壊れていた。そのため、打者に迷惑をかけまいと焦った結果、チャックはうまくかみ合わずに着用を断念した。

 大谷は「僕は着たかったんですけど、着る時間もピッチクロックに含まれるのかが分からなかった。(審判に上着の着用について)確認したら(制限時間に)含まれないことが分かったので、次からは普通にタイムを取って着られるという感じでした」と振り返った。今季から導入されたピッチクロックでは打者は残り8秒までに準備を整えなければ、1ストライクが宣告される。一方、投手の上着着用は導入前に想定していなかったためか、規定はない。

 MLBの各球団の選手からヒアリングなどを行い、ルールが適切に運用できているかをチェックするフィールド・オペレーション部門でシニアディレクターを務めるラージャイ・デービス氏(42)は取材にこう回答した。「これから暖かくなるので、またすぐに同じようなケースは起こらないかもしれないが、シーズン終盤やプレーオフの時期に再びそういうケースが起こる可能性は十分にあり得る。早急に状況を確認して検討すべき案件だと認識している」

 今回の事例は看過できず「大谷ルール」として明文化する必要があるということだ。問題の場面はSNS上で「大谷にもできないことがあった」などとバズったが、現場レベルでは決して笑えないシーンだった。

 デービス氏はまず気の毒そうに「選手が着る意思を示していたのならば、本来はしっかり上着を着るべきだったと思う。ショウヘイは投手でもあり、肩を冷やしてはいけないし、体を守ることが一番なのだから」と見解を示した上で、ルールの盲点を次のように指摘した。

「走者はタイムを取ることができない。かといって相手の投手、または捕手が大谷のために回数に制限があるタイムを使うのはアンフェア。味方の打者が大谷のために1回しかないタイムを使うのも悩ましい。2021年からナ・リーグもDH制を採用して、メジャーでは投手が打席に立つ機会がほぼなくなった。それに伴い、走者として塁に出た投手が上着を着る機会が想定から外れた可能性は否めない」

 確かに現在のMLBでは打席に立つ投手は大谷以外は考えにくいのは事実だ。

 デービス氏は「(使用回数が減らないことを前提に)投手または捕手、打者のいずれかがタイムを申し出たとみなして時間をつくるのか、塁に出た走者・大谷が特例で申し出ることができるようにするのか、それ以外の妙案があるのか」とあくまで私案とした上で、専門部署で明確化に向けて検討すべきとした。MLBの宝・大谷を守るためには早急な検討でなく、導入が急務だ。

【TWP(二刀流選手)】MLBは2020年のルール変更でTWP登録を新設。前年かその年に20イニング以上の投球と野手での20試合以上の先発出場(1試合3打席以上)が条件。
【Shohei Ohtani Rule】MLBと選手会は22年3月に打順に入った先発投手が、降板後もDHとして出場を続けられることで合意した。

☆ラージャイ・デービス氏 2001年6月のドラフトでパイレーツから38巡目(全体1134位)で指名されて入団。06年にメジャーデビュー。その後、ジャイアンツ、アスレチックスなど計10球団で14年間プレーした。通算415盗塁のスピードスターとして知られ、16年のインディアンス(現ガーディアンズ)では43盗塁をマークして盗塁王に輝いている。