【取材の裏側 現場ノート】「源田さんによほどのことがない限り、僕に出番はありませんよ」
代表選出が決まった直後の今年1月、中野拓夢内野手(26=阪神)はカメラの回っていない場所で笑いながらそう語っていた。照れ隠しだったのだろう。世界最高峰の舞台の出場切符を手にし、燃えない選手なんていない。だが「源田さんによほどのこと」が起きた。
目の前の「ワンチャンス」をつかみ、一気にここまでのし上がってきた選手だ。2年前の若手寮・虎風荘への入寮時「目標は新人王のタイトルを取ることです」と真顔で言い切った社会人出身のドラ6は、あっという間にレギュラーの座をつかみ新人特別賞を受賞した。盗塁王のタイトルのオマケつきで。そして今、とうとう世界を舞台にして戦っている。
強烈に印象に残っているのはルーキーイヤー、2021年4月10日のDeNA戦(横浜)。この試合でプロ初のスタメン出場を果たした中野は4打数1安打1打点。1点リードの7回二死一、三塁のピンチで、戸柱の放った遊撃への難しいライナーを好捕するビッグプレーも披露し、矢野監督に「明日も使ってみようかな」と言わせた。個人的には、彼の阪神でのサクセスストーリーはここから始まったような気がする。
打撃も守備も走塁も「攻め」の姿勢が身上。どう見ても無理そうな打球に追いつこうとするから、結果的には失策数も増える。でもその後は絶対に挽回する。球場の誰もが驚くような超ビッグプレーでチームの劣勢を一転させる姿を何度も見てきた。
そんな彼だからこそWBCという大舞台でもラッキーボーイ的な存在になってくれるのではないかと期待している。無事に1次ラウンドを突破し、ここからはノックアウト形式のトーナメント。対戦相手のレベル、戦いの厳しさはこれまでの比ではない。苦しい局面は必ず訪れるだろう。心が折れそうになる瞬間も来るかもしれない。そんな時、中野の積極果敢な打撃、守備、走塁はチームを勇気づけ、流れを大きく変えてくれるはずだ。やっちゃえ中野くん。先に世界で「アレ」しちゃえ。
(阪神担当・雨宮弘昌)












