オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第127回は「あがりびと」だ。

 九州北部、特に佐賀県に生息しているという妖怪である。もともとは普通の人間だった。だが、何らかの理由で山に入り、人間としての常識や感覚をすべて忘れてしまった。そのため、裸で徘徊しており、人間の言葉が通じない。時々、一般の人間では考えつかないような行動をとる場合がある。

 かつて昭和40年代ぐらいまで、日本にはサンカと呼ばれる山の民が存在した。沢から沢へ渡って生活し、テントのような仮設の小屋に住み、焼き石でふろを沸かし入っていた。基本的に自給自足で生きていたが、竹細工などを里の人に売って現金を稼ぐこともあった。昭和に入り、多くの山の民が里に下り、日本国民として国籍を持つようになった。

 だが、あくまで都市伝説レベルだが、今もサンカは存在し、シノガラというネットワークを駆使しているといわれる。非常に秘密保持に厳しく、裏切り者は始末されてしまうそうだ。そのサンカが、今風にモデルチェンジして「あがりびと」と呼ばれるようになったのであろうか。

 あがりびとの話に戻ろう。彼らは別名「あがりさん」と呼ばれており、神様に近い存在だという。基本的に山に住んでおり、男女ともに存在し、無表情であるが、ニコニコしていることもあるようだ。歌のような、お経のようなものを口ずさむ。奇声を発することもある。もともと山で修行していた仏教徒ではないかと言われている。

 山に入ると、世俗のストレスやプレッシャーがなくなり、開放的になることがある。こうなると危ない。一線を越えると、あがりびとになってしまうのかもしれない。