オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第126回は「とびこんま」だ。

 ある地方に伝わっている、空を飛ぶ馬の妖怪である。その地方では「とびこんまの鳴く夜は気を付けろ」という言葉が受け継がれている。これは馬にさらわれるという意味であろうか。

「こんま」という言葉は「馬」という意味であり、そのまま「飛び」という言葉を組み合わせただけの単語である。安易なネーミングだといえば、それまでだ。

 この言葉の発生原因として、NHKの連続テレビドラマにて1986年「はね駒(こんま)」というタイトルのドラマが放送されている。つまり、この昭和のドラマがこの妖怪のネーミングの由来となった可能性はあり得る。とすれば、この妖怪の成立は昭和時代と推定できる。しかし、そのベースに伝承的な事柄があったことは容易に推定できる。

 馬が空を飛ぶというシチュエーションは、何らかの前兆現象である。例えば、「おしら様」の伝承を考えると、娘と馬の許されない愛という設定が浮き彫りになる。最後は娘を奪って馬が天に昇っていくというオチになっており、このことから不吉の前兆とも言えるかもしれない。

 他にも八王子方面で伝承されている「首なし馬」が連想される。これは落城寸前の城から、姫君を乗せて馬が逃げ出し、その馬は首が切られてもひたすら走り続けたという妖怪伝説である。

 西洋においては、天をかける馬「天馬=ペガサス」が連想される。このペガサスもなんらかの前兆現象がうわさされており、わが国においても明治維新のころ、天空を馬が駆ける姿を目にした人物が実在する。これは昭和初期の菊池寛が主催の座談会において出た話題である。つまり、日本においても、ペガサス出現は時代の変わり目を表しているのだろう。